小顔に憧れ、美容医療で様々な治療を受ける人が多くいます。しかし、横顔の「アゴのたるみ」、特に二重アゴは見落とされがちながら、老けて見える大きな要因の一つです。さらに、このアゴのたるみが、意外な健康障害と関係しているケースが増えています。近年、「太っていないのに二重アゴになる」人が増えている背景には、ある身体の使い方の変化が隠されています。歯科医師がその正体に迫ります。
舌の正しい位置とは?現代人に増える「低位舌」の背景
突然ですが、あなたは「舌の正しい位置」をご存知でしょうか?おそらく、ほとんどの方が「知らない」と答えるでしょう。
近年、私たちの食生活の変化やスマートフォンの普及といった生活習慣の変化により、顔や口に影響が出る人が増えています。これは舌の位置にも無関係ではありません。
昭和の時代を振り返ると、現代よりもはるかに「硬い食材」が多く、日本人は日常的に「よく噛む」習慣がありました。例えば、歌手で俳優としても活躍した石原裕次郎さんのように、しっかりとしたアゴを持つ顔立ちが一般的でした。しかし、平成へと時代が進むにつれて、レトルト食品や冷凍食品が普及し、柔らかい食材や「とろけるような食感」が美味しさの基準となりました。現代の例として、嵐の二宮和也さんのように、ほっそりとしたアゴを持つ顔立ちが多く見られます。
食生活の変化は、私たちの顔、特にアゴの成長に顕著に表れます。アゴが小さくなると、食べ物を噛む機能が十分に発達しにくくなります。アゴが小さくなっても、歯の大きさ自体はあまり変わらないため、歯並びが悪くなりやすくなります。さらに、口の中のスペースが狭くなることで、舌を自由に動かせる範囲が制限され、発音、特にサ行やタ行が不明瞭になることがあります。そして、舌を収める十分なスペースがないと、舌が本来あるべき正しい位置に収まらなくなります。これこそが、現代人に増えている口の機能に関する問題の一つです。
あなたの舌は大丈夫?「低位舌」セルフチェックと二重アゴのメカニズム
では、あなたの舌が正しい位置にあるか、簡単にセルフチェックしてみましょう。まず、口を軽く閉じ、リラックスした状態で唾液をゴクンと飲み込んでみてください。その瞬間の舌の位置が、あなたの舌が普段置かれている位置であり、医学的に本来あるべき正しい位置に近い状態です。具体的には、舌の先端が上の前歯の付け根あたりに触れていて、舌の表面全体が上アゴにぴったりと吸い付いている状態が、舌の正常な位置とされています。
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横顔の下顎と二重アゴのイメージ画像。低位舌との関連が指摘される。](https://news.yahoo.co.jp/articles/d45efd54bc96230a11eb826efc2c930c6964020b/images/000)
ちなみに、その時、上の歯と下の歯は接触していますか?通常、リラックスしている時の上下の歯の間には2〜3mm程度の隙間があるのが自然です。もし、常に上下の歯が強く当たっている感覚があるなら、それは「歯列接触癖」という口腔悪習癖かもしれません。この癖があると、アゴが痛くなったり口が開きにくくなったりする「顎関節症」になるリスクが2倍以上になると言われています。
また、鏡で口角(唇の端)の周りに連続した外側へのしわが寄っている場合、歯ぎしりや食いしばりによって歯の長さがすり減って短くなっている可能性があります。気になる点があれば、早めに歯科医院に相談することをお勧めします。
舌が正常な位置にない「低位舌」の状態の場合、舌の重さ(成人で約150g)によって、舌が低い位置、つまり下アゴの方に落ち込んでいます。低位舌になると、下の歯の形が舌に写り込んでギザギザした形になることがあります。さらに、舌が口の中を下方に押し下げるため、下アゴの下部分が物理的に膨らんで見えます。これが、太っていないにも関わらず二重アゴに見える原因の一つとなるのです。
まとめると、体重は標準なのに横顔に二重アゴが見られる人は、「低位舌」である可能性が考えられます。特に、下アゴが小さく、先端が尖って見えるような顔立ちの人は、構造的にアゴの下に脂肪がつきやすく、二重アゴがより目立ちやすい傾向があります。低位舌の人は、「食べる」「飲み込む」「話す」といった口腔機能が十分に働いていないことが多く、顔全体の皮膚がたるみやすくなるため、二重アゴがさらに助長される悪循環に陥ることもあります。
見た目だけじゃない。「低位舌」が招く恐ろしい健康リスク
低位舌でもう一つ、外見以上に注意すべきなのが健康への様々な影響です。低位舌の多くのケースで、鼻呼吸ではなく「口呼吸」になっている可能性が非常に高いです。口呼吸は、鼻呼吸に比べて体内に取り込める酸素の量が約10%減少すると言われています。また、口の中が乾燥しやすくなるため、唾液が持つ本来の抗菌・殺菌・洗浄作用が弱まってしまい、むし歯や歯周病にかかりやすくなります。唾液には免疫作用もありますが、これも低下するため、風邪やインフルエンザ、さらには新型コロナウイルスなどの感染症にもかかりやすくなるリスクが高まります。
このように、単なる見た目の問題と思われがちなアゴのたるみや二重アゴの裏には、「低位舌」という状態が隠れており、それは口腔機能の低下や様々な病気へのリスク増大と密接に関わっているのです。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/d45efd54bc96230a11eb826efc2c930c6964020b