近年、日本の職場で「静かな退職(Quiet Quitting)」という働き方が注目されています。これは、会社を辞めずに必要最低限の業務のみをこなし、昇進や高い評価を積極的に求めないスタイルです。「管理職は罰ゲーム」といった見方があるように、責任増大に見合わない待遇や労働時間などが背景にあるとされます。ワーク・ライフ・バランスを極限まで追求するこの傾向は、日本のビジネスシーンにどのような影響を与えているのでしょうか。
日本のオフィスで考え込むビジネスパーソン
日本社会における「静かな退職」の浸透度
人材情報サービス「マイナビ」の調査によると、正社員の4割以上が「自分も静かな退職をしている」と回答しています。年代別に見ると、20代が46.7%、50代が45.6%と、特にこれらの年代で高い割合を示しています。この働き方を選択した人の約6割が、「休日や労働時間、自分の時間への満足感」「仕事量に対する給与額への満足感」を得られたと回答しており、自身の幸福度を優先する傾向が見られます。
企業・管理職から見た意外な評価
かつては「怠け者」と見られがちだったこの働き方ですが、意外にも企業側からは歓迎される面もあります。「マイナビ」の中途採用担当者への調査では、「静かな退職」に賛成が38.9%と、反対の32.1%を上回る結果となりました。これは、指示した範囲の業務はしっかりと遂行するため、上司にとっては「計算できる」頼れる部下と映るからです。また、過度な期待をしないことで、給与や待遇に対する不満を抱きにくい点も、企業にとって都合が良いと言えます。
「静かな退職」を続ける上での留意点
多くの「静かな退職」実践者は、今後もこの働き方を続けたいと回答しています。しかし、注意すべき点もあります。それは、任された業務においてミスがあったり、目標を達成できなかったりした場合、評価がすぐに下がるリスクがあることです。その結果、文字通りの「退職」に追い込まれる可能性もゼロではありません。ワーク・ライフ・バランスを追求する一方で、最低限の成果を出し続けることが求められます。