近年、パチンコ・パチスロの遊技機において、アニメ作品を題材にしたものが圧倒的な多数を占めています。アニメを見た経験がないユーザーでも、遊技機を通じてその作品を知ることも珍しくありません。なぜ実写作品よりもアニメ化作品の親和性が高く、これほどまでに普及したのか。パチンコ・パチスロ業界に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が、その背景を解説します。
パチンコ・パチスロ機の液晶画面に映るアニメ(二次元コンテンツ)の演出映像
実写コンテンツ遊技機の課題:CG化とファンの反発
実写ドラマや映画、あるいは実在するタレントを題材にした遊技機の場合、新規の実写映像制作には高いハードルがあります。このため、多くは人物やキャラクターをCG化し、そのCGキャラを使って新たな映像を作る手法が採用されます。『CRぱちんこAKB48』や『牙狼』シリーズなど、CG映像が効果的に使われた成功例もありますが、実写のCG化はユーザーからの支持を得にくい側面があると藤井氏は指摘します。
「CGによる映像が、本来の実写映像やイメージと大きくかけ離れてしまうケースが多く見られます。そうなると、オリジナルコンテンツの熱心なファンから反感を買ってしまうことが珍しくありません。本来、オリジナルコンテンツのファン層を遊技機に取り込むことを目指しているにも関わらず、遊技機内のCGキャラクターがその目的に反してしまうのは本末転倒です。実写コンテンツの遊技機化には、こうしたリスクが避けられないのです」(藤井氏)
藤井氏によれば、遊技機の液晶画面上での映像表現との親和性の高さも相まって、二次元コンテンツを題材とした遊技機が優勢になっていくにつれ、ユーザーの支持も自然と二次元コンテンツへシフトしていったといいます。
アニメ・二次元コンテンツが選ばれる理由:演出の分かりやすさと安心感
パチンコ・パチスロ機の人気を左右する要素は、スペックや演出の楽しさなど多岐にわたりますが、「演出が分かりやすいかどうか」は特に重要なポイントです。
「二次元コンテンツの機種が増え、ユーザーが二次元コンテンツによる映像演出に慣れ親しむにつれて、新しい機種でも二次元コンテンツであれば直感的に演出を楽しめるようになってきました。つまり、『二次元コンテンツなら、こういう演出パターンが多い』という一種のトレンドや共通認識が生まれ、ユーザーはそういった機種に対して安心感を持ちやすくなったのです。こうした流れの中で、自然と二次元コンテンツの遊技機の方がユーザーに支持されやすくなっています」(藤井氏)
実際、ここ数年で二次元コンテンツを題材とした機種に人気が集中しており、実写コンテンツを遊技機化する試みの数は大幅に減少しています。
遊技機化を前提としたアニメ制作も
様々なアニメ作品が遊技機に採用されていますが、中には企画段階から遊技機化を視野に入れてプロジェクトが進行するケースもあるようです。アニメ作品の多くは、原作サイド、映像制作会社、広告代理店などで構成される「製作委員会」方式で制作されますが、この委員会に遊技機メーカーが参加していることも少なくありません。
「アニメの製作委員会に遊技機メーカーが入っていたとしても、必ずしも遊技機化が実現するわけではありません。しかし、二次元コンテンツの多角的なメディアミックス展開において、遊技機が重要な位置を占めていることは間違いありません」(藤井氏)
現在のパチンコ・パチスロ業界と二次元コンテンツは、切っても切り離せないほどの強い結びつきを持っています。今後、パチンコ・パチスロ業界側からアニメファン層へのアプローチがさらに活発になる可能性も考えられます。
【参考】
https://news.yahoo.co.jp/articles/009b7965af94e0c76b749847c0b969ef3484d266