「走りが優先、燃費は二の次」。かつてのスバル車のイメージは、新型ストロングハイブリッド「S:HEV」の登場で大きく変わろうとしています。スバルが満を持して投入したこの新世代ハイブリッドシステムは、まずクロストレックに搭載されました。WLTCモード燃費18.9km/Lという優れたカタログ値を誇るクロストレックS:HEVですが、実際の普段使いでの燃費はどれほどの実力を持つのでしょうか?この記事では、約500kmにわたる実走行での燃費検証と、その使用感について詳細にレポートします。
スバル クロストレック S:HEV (ハイブリッド車) のフロント斜めからの外観
実際の燃費はWLTCモードに迫る優秀な数値
結論から述べると、4日間で合計482.6kmを走行した際のメーター表示燃費は18.4km/Lでした。これはWLTCモード燃費18.9km/Lに極めて近い優秀な数値と言えます。
検証期間中の走行データを見ると、316.4km走行時点では19.4km/Lを記録しており、カタログ値を超える数値が出ていたことも確認しています。その後の撮影のために短距離移動と停止を繰り返したことが、最終的な数値がわずかに落ち込んだ要因と考えられます。スバル車としては、非常に優れた燃費性能であると言えるでしょう。
他モデルとの比較と航続可能距離
参考までに、筆者が過去に乗った他のスバル車との比較です。アウトバック(1.8L水平対向4気筒ターボ)では164.5km走行時に12.2km/L、先代インプレッサ(2.0L水平対向4気筒自然吸気)では159.0km走行時に13.0km/Lでした。クロストレックS:HEVの燃費性能が、いかに進化しているかが分かります。
クロストレックの燃料残量計はメーター右下に表示されますが、150km程度走行しても目盛りがほとんど減らないことに驚きました。これはS:HEVシステムの高い効率と、63Lという大容量の燃料タンクのおかげです。満タン直後の航続可能距離表示は1070kmを示しており、スバルが謳う「ワンタンク1000km」の実力は十分に備わっていると見て良いでしょう。給油の頻度を減らせるのは、日常使いにおいて非常にありがたい点です。
大型センターディスプレイと利便性機能への印象
車内に乗り込んでまず目を引くのが、11.6インチの大型センターインフォメーションディスプレイです。2020年のレヴォーグから採用されている縦型の大型ディスプレイは、初めて見る人にとってはやはりインパクトが大きいようです。
信号待ちなどで停車状態を維持するオートビークルホールド(AVH)のスイッチは、この大型ディスプレイの下部に常に表示されています。ブレーキペダルを踏み続ける必要がなく快適なため、筆者は常に使用したい機能です。ただし、スバル車の場合、システムを一度オフにするとAVHもオフになり、再起動時に再びタッチしてオンにする必要があります。視界に入りにくい位置にあるためオンにし忘れることがあり、ヒヤッとすることが何度かありました。個人的にはメモリー機能が欲しいと感じました。
what3wordsナビシステムの試用結果
今回、ナビシステムの目的地設定に「what3words」を試してみました。これは地球上のあらゆる場所を3m四方に区切り、それぞれに固有の3つの単語を割り当てることで正確な位置を特定できるサービスです。使用するには、事前にwhat3wordsのウェブサイトやスマホアプリで目的地の3つの単語を調べておく必要があります。
試乗期間中は、スマホアプリで場所を検索し、表示された3つの単語をクロストレックのタッチパネルに手入力するという手順で目的地を設定しました。スマホで調べた情報をクルマに通信できれば、手入力の手間が省けてより便利になると思いましたが、その機能の有無は未確認です。
また、検索履歴を表示させた際に少し困惑しました。what3wordsで設定した目的地に再度向かう必要があり履歴を見たところ、表示されたのは目的地名や住所ではなく、入力した「3つの単語の羅列」だったためです。どの単語の組み合わせがどの場所だったかを記憶しているわけではないため、一つずつ選択して確認する必要がありました。これも、よりスマートな表示方法があるのかどうかは確認できませんでした。
結論:実燃費は良好、ハイブリッド制御はスムーズ
今回の検証で、クロストレックS:HEVの実燃費がWLTCモードに近い、非常に良好な数値であることを確認できました。条件が良ければ、WLTC郊外モードの20.6km/Lを超えるポテンシャルも感じられました。
ハイブリッドシステムは、ドライバーや同乗者に制御の煩雑さを意識させないスムーズな挙動が特徴です。走行状況に応じてEV走行、エンジンによる発電と走行用モーターアシスト、アクセルオフでのエンジン停止などを目まぐるしく切り替えていますが、その Übergang(ユーベルガング:ドイツ語で「移行」「遷移」の意味)は極めて自然です。ドライバーはただ、気持ちよく運転することに集中できます。
燃費が良く、燃料残量計の目盛りがなかなか減らないという事実は、運転中の精神衛生上も大変好ましいものです。4日間の試乗で、そのメリットを改めて実感することができました。
SUBARU クロストレック Premium S:HEV EX 主要諸元
- 全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1575mm
- ホイールベース:2670mm
- 車重:1660kg
- サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
- 駆動方式:4WD
- エンジン 形式:水平対向4気筒DOHC+モーター
- 型式:FB25
- 排気量:2498cc
- ボア×ストローク:94.0mm×90.0mm
- 圧縮比:11.9
- 最高出力:160ps(118kW)/5600rpm
- 最大トルク:209Nm/4000-4400rpm
- 燃料供給:DI
- 燃料:レギュラー
- 燃料タンク:63L
- 駆動用モーター:MC2型交流同期モーター
- 最高出力:88kW(119.6ps)
- 最大トルク:270Nm
- 駆動用バッテリー:リチウムイオン電池 容量1.1kWh
- トランスミッション:リニアトロニック
- 燃費:
- WLTCモード 18.9km/L
- 市街地モード 15.4km/L
- 郊外モード 20.6km/L
- 高速道路モード 19.7km/L
- 車両本体価格:405万3500円
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/953819fc05c41a7a8117c691609127782ff55fb6