堤防道路「天端」の意外な危険性とは?ガードレールがない理由を解説

日本の各地で、大きな川沿いの道路が市街地を避ける「バイパス」として利用されることがあります。信号が少なく、スムーズに進めるように見えるこれらの道ですが、特に堤防の上端、いわゆる「天端(てんば)」を通る道路には、普段の道路とは異なる独特の危険が潜んでいます。この記事では、なぜ堤防道路の天端にガードレールが設置されていないのか、そしてそこを走行する際の注意点について解説します。

川沿いの道路は、片側が川であるため、橋が架かる場所以外に「十字路」がほとんどありません。また、高い堤防の下を通る道路の場合、川を渡る他の道路との交差部分を立体交差とすることで、信号を極力減らす設計が可能です。こうした特性から、混雑を避けたいドライバーにとって魅力的に映ることがあります。

天端道路に潜む具体的な危険性

特に注意が必要なのは、堤防の上端を通る「天端(てんば)」の道路です。場所によってはガードレールが全く設置されておらず、路肩からすぐに堤防の傾斜(法面)となっている箇所が多く見られます。中小河川の交通量の少ない場所であればまだしも、中には県道に指定され、日常的に多くの車両、特に大型車が通行するにも関わらず、ガードレールがない区間も珍しくありません。たとえば、埼玉県道339号線のように、幅員が狭く大型車同士のすれ違いが困難な場所では、ほんのわずかな操作ミスが重大な事故に繋がります。対向車とのすれ違いや、まして追い越しなどは極めて危険です。実際に、このような天端道路では車両の転落事故が度々発生しており、対策が求められている場所もあります。

ガードレールがなく堤防の傾斜に隣接する埼玉県道339号の天端道路を走行する車両。大型車のすれ違いが危険な狭さ。ガードレールがなく堤防の傾斜に隣接する埼玉県道339号の天端道路を走行する車両。大型車のすれ違いが危険な狭さ。

なぜ天端にガードレールが設置されないのか?

では、なぜこれほど危険な天端道路にガードレールが設置されない場所があるのでしょうか。じつはこれには、堤防が本来持つ重要な役割である「治水」、つまり洪水から街を守る機能が深く関わっています。堤防の最も重要な機能は、河川が増水した際に水を川側に閉じ込め、市街地側への浸水を防ぐことです。もし天端にガードレールを設置するために、その基礎として堤防内部に「孔(あな)」を空けてしまうと、豪雨などによる増水時にその孔から水が堤防内に浸入し、堤防全体の強度を低下させる恐れがあります。また、記録的な豪雨などで堤防の一部が損傷した場合、緊急的に土嚢(どのう)などを迅速に積み上げて応急措置を施す必要があります。しかし、天端に沿ってガードレールが設置されていると、この土嚢などの積み増し作業の大きな妨げとなってしまうことも考慮されています。治水上の理由から、あえてガードレールを設置しない、あるいは設置できない場所が存在するのです。

このように、一見便利に見える川沿いの堤防道路、特に天端を通る道路は、治水という堤防の役割を優先するがゆえに、ガードレールがないなどの特有の危険性を持ち合わせています。市街地の混雑を避けるために利用する際は、その構造を理解し、幅員が狭い場所での対向車とのすれ違いには最大限の注意を払い、決して無理な追い越しなどは行わないよう、より一層の慎重な運転が求められます。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/9a068720e35aa72100ff16f55aa70e4d66c5ed75