フジテレビのバラエティ制作部で企画担当部長を務める鈴木善貴容疑者が、2024年9月から2025年5月にかけてスマートフォンなどを利用し、オンラインカジノに繰り返し現金を賭けたとして、常習賭博の疑いで逮捕された。報道によると、賭け金は約1億円に達し、約2400万円の損失があったとされる。この逮捕は、著名人の関与が相次いで明るみに出ている一連の「オンラインカジノ問題」(以下、オンカジ問題)の新たな展開として注目されている。
オンカジ問題では、これまでにもオリンピック選手、プロ野球選手、お笑い芸人、さらにはアイドルなど、様々な分野の有名人が利用していたことが発覚し、警察による事情聴取や書類送検が相次いでいる。先日は、フジテレビアナウンサーのオンカジ関与が報じられ、社内処分と謹慎という対応が取られたばかりだった。今回の逮捕は、同局の幹部候補とも目されていた社員によるものであり、問題の根深さを示唆している。フジテレビ関係者の話では、この男性社員はオンラインカジノだけでなく、海外のカジノにも頻繁に足を運び、同僚や会社から借金までしていたという。エリートとされるマスコミ社員でさえ、オンカジの強い誘惑から逃れられない実態が浮き彫りになった形だ。
オンカジ関連の摘発が続く中で、単なる違法ギャンブルへの手出しという側面だけでなく、様々な問題点が表面化している。「無料版」のオンラインカジノは、日本国内からでもスマートフォンアプリとして手軽にダウンロードできる。これらの無料版の広告には、日本の有名アスリートや芸能人が出演しているケースが見られた。知名度の高い人物の広告起用は効果が高く、多くの日本人ユーザーが無料版の先に存在する「有料版」の利用についても「合法」であると誤認した可能性が高いと指摘されている。実際に、摘発された人々の中には「合法だと思った」と供述する者もいるという。
オンラインカジノ事業者の多くが海外に拠点を置いていること、そしてその本店所在国・地域ではカジノが合法であるという事実が、対策を困難にしている側面がある。しかし、こうした状況に対し、日本政府は許認可権限を持つ関係国に対し、日本向けのサービス停止を働きかけたり、インターネット広告などを通じたサイトへの誘導を禁止する法案が衆議院で可決されるなど、段階的な対策が進められている。
オンラインカジノ常習賭博容疑で社員が逮捕、書類送検されたフジテレビ本社
そして現在、捜査当局は、単なる利用者だけでなく、日本人ユーザーを積極的に「オンカジ」へと誘い込んでいた人物たちの存在に注目しているという。この事件を取材する大手紙社会部デスクによると、今後はこうした勧誘者やインデューサー(誘導者)に対する捜査が強化される見込みだ。
今回のフジテレビ社員逮捕は、オンカジ問題が著名人やメディア関係者といった社会的な影響力を持つ層にも深く浸透している現状を改めて示した。政府や捜査当局による対策は進められているものの、海外事業者という特殊性や合法性の誤認、そして依存性の高さなど、問題は多岐にわたる。捜査の焦点がユーザーの勧誘者へと移る中で、オンカジ問題の全容解明と、その影響を食い止めるための取り組みが一層重要になっている。