公明党は先の東京都議選で候補者22人を擁立したが、当選は19人にとどまり、1989年以来36年ぶりに全員当選を逃した。党本部や支持母体・創価学会の本部がある新宿区での敗北などが党内に衝撃を与えている。組織力の低下が課題として浮き彫りとなる中、投開票まで1カ月を切った参院選に向け、党の立て直しを急ぐ必要に迫られている。
東京都議選の結果判明を受け、記者会見で硬い表情を見せる公明党の斉藤鉄夫代表
都議選結果と党内の衝撃
大勢判明後の23日未明、記者会見に臨んだ斉藤鉄夫代表は、「大変残念だ。政策の訴えが今ひとつ足りなかった」と硬い表情で語った。会見を見守る他の幹部らも同様に暗い表情を浮かべていた。公明は都議選と参院選が重なる今年を「政治決戦の年」と位置づけ、今回の都議選では改選前から1減の22人を擁立していた。1993年から8回連続で続いていた全員当選の記録が今回途絶えたことは、党にとって大きな痛手となった。
厳しい選挙戦と主要候補の落選
連日、斉藤氏や山口那津男元代表といった党幹部が激戦区を中心に選挙運動を展開した。公明党と関係が良好な小池百合子都知事も度々応援に駆けつけた。しかし、党の地盤とされる新宿区ではわずか257票差での惜敗。さらに大田区では現職2人が議席を失う「共倒れ」となるなど、厳しい結果が相次いだ。
組織力低下の背景と自己分析
こうした結果の背景には、長年にわたり公明党を支えてきた支持者の高齢化に伴う組織力の低下があるとの見方が強い。昨年の衆院選でも8議席を減らし、比例代表の得票数も過去最少の596万票にとどまるなど、組織の「基礎体力」の低下が指摘されてきた。今回の都議選でも、得票数の減少や僅差での勝利となった選挙区が散見されたことが、その傾向を裏付けている。斉藤代表自身も会見で「運動量が足りなかった。党の努力が足りなかったことが第一の要因だ」と述べ、組織の課題を認めた。
参院選への影響と自民党との連携問題
参院選が目前に迫る中、公明党内の焦燥感は一段と強まっている。都議選では自民党の裏金事件を受け、都本部が自民候補への推薦を見送った一方で、参院選では派閥裏金事件に関連し政治資金収支報告書に不記載があった3人に対し、党本部が4月に既に推薦を決定している。党内関係者からは「今も『裏金問題』を抱える自民党を応援する公明党だと世間に思われている。自民党に対し、もっと厳しく反省を迫るべきだ」といった不満の声がくすぶっており、自民党との連携のあり方が参院選に影を落とす可能性も指摘されている。
他党の台頭と戦略の見直し
さらに、今回の都議選では国民民主党や参政党が一定の議席数を確保するなど、他の政党の勢いも無視できない状況となっている。党内からは「全体の戦略もよく見直す必要がある」との危機感が上がっている。しかし、参院選の公示日まで約10日という状況下では、幹部の一人は「軌道修正はなかなか大変だ」と語っており、短期間での劇的な立て直しは困難との見方もあり、先行きは不透明だ。
結論
東京都議選での全員当選失敗は、公明党が抱える組織力低下という構造的な課題を改めて浮き彫りにした。この結果は、目前に迫った参院選に向けて、党が短期間でどのように立て直しを図り、逆風を乗り越えるかが喫緊の課題であることを示唆している。自民党との連携や他党の台頭といった外部環境の変化も踏まえ、公明党は難しい政治判断を迫られることになるだろう。