読売新聞が5月15日付朝刊に掲載した提言「皇統の安定 現実策を」は、皇室典範の規定を改める女性・女系天皇の容認に踏み込み、大きな注目を集めた。しかし、政界では皇位継承に関する与野党協議を担った自民党の麻生太郎最高顧問と立憲民主党の野田佳彦代表の意見が対立し、今国会でのとりまとめは見送られた状況だ。このような中、「愛子天皇」の誕生を強く願う漫画家の小林よしのり氏が、皇室存続のために「実現するなら今しかない」として緊急提言を行っている。
「男系維持」はカルト思想か? 歴史から見る皇室の伝統
小林氏は、これまで皇室問題を語る資格があるのは政治家だけだと言わんばかりの「愚民政策」があった中で、読売新聞が「皇統存続を最優先に現実策を(女性天皇、将来的な女系天皇の可能性を排除せず議論を)」と提言したことを「画期的だった」と評価する。
氏は、「万世一系」「男系」のみで皇位が継承されてきたとする主張を「完全なカルト思想だと思う」と断じる。126代の天皇を遡れば、最初に「天皇」を名乗った推古天皇や、天皇号を法的に定めた持統天皇といった女帝が何人も存在したことを指摘。古代の律令である「継嗣令」は1200年近くにわたり「女帝の子も男帝の子と区別なく皇位継承者になれる」と明記しており、男女双系こそが皇室の真の伝統だと訴える。
皇位継承の議論について提言する漫画家・小林よしのり氏
明治の皇室典範で男系男子に限定されたのは、当時の「日本人の脳髄にまで達した男尊女卑の風潮」によるものであり、男系を伝統とする考えは、いまだ男尊女卑の因習から抜け出せず、明治以降だけが伝統だというカルト思想の持ち主だと批判する。
皇室存続への現実策:愛子皇太子誕生の必要性
小林氏は、現在の皇太子不在は異常事態であり(秋篠宮殿下は皇位継承順位第1位を表わす皇嗣)、皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならないと訴える。そうなれば、未来の皇室の安泰は「今の倍の確率になる」と主張する。
愛子さまのカリスマ性と社会への影響
大阪・関西万博訪問時、各所で歓声があがったように、愛子さまは皇女として人並み外れたカリスマ性を備えていると小林氏は指摘する。気品に満ちた振る舞いや発するお言葉を見聞きするほど、「愛子さまが天皇にならなければ、日本は終わるだろうと思う」とまで述べる。
少子化が進み経済的にも縮小する日本において、「女性は天皇になれない。日本国の象徴にもなれない」という「ムラの掟」に縛られていては、社会に活力が生まれるはずがないと氏は論じる。「女性活躍」を言いながら子育てや介護の負担を押し付けるような因習が残る日本で、愛子皇太子が誕生すれば、「これまでと違う未来がある」と国民が考え始め、社会に活気が生まれると期待する。各地を巡幸されたり、皇室外交を担われる愛子天皇を目にした日本人は、その姿に誇りを持つだろうと展望する。
男系固執派への批判
小林氏は、男系固執派について、天皇や皇族を個人として敬うのではなく、“血の器”、“Y染色体”が尊いのだと信じる向きがあると指摘。その考えを「カルトと言わずして、なんと呼べばいいのか」と厳しく批判する。
以上の理由から、小林よしのり氏は、皇位継承の議論において女性・女系天皇の可能性を排除しない現実的な議論を求めるとともに、皇室の未来、そして日本の活力のために、今こそ皇室典範を改正し愛子天皇の誕生を急ぐべきだと重ねて提言している。
【参考資料】
週刊ポスト 2025年6月27日・7月4日号
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