国土交通省関東運輸局は25日、運転手への不適切な点呼が横行していた日本郵便に対し、一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す行政処分を出した。これは貨物自動車運送事業法に基づくもので、同社は約2500台のトラックやバンを5年間使用できなくなる。総務省も同日、日本郵便株式会社法に基づく監督上の命令を出している。
国土交通省関東運輸局の藤田礼子局長(右)から行政処分の通知を受け取る日本郵便の千田哲也社長
国交省による許可取り消し処分と総務省命令
国交省では、関東運輸局の藤田礼子局長が25日、日本郵便の千田哲也社長に直接、行政処分の通知を手渡した。千田社長は「多くの皆さまに多大なるご心配、ご不安をおかけしたことをおわびします。再発防止策に、経営陣が先頭に立って取り組んでいきたい」と述べ、謝罪と再発防止への決意を示した。
不適切な点呼の実態と違反の詳細
国土交通省の調査によると、関東運輸局管内では、点呼記録簿の「不実記載」といった違反が26の郵便局で確認された。これらの違反による違反点数は合計197に上り、許可取り消し基準となる81点を大幅に超過した。不実記載は全国的にも確認されており、73の郵便局で同様の違反が認められた。これを受け、国交省は点呼の責任者である同社の運行管理者211人の資格を取り消す処分を行った。
処分対象外の軽貨物と今後の対応
日本郵便は、今回の処分対象となった約2500台のトラックやバンに加え、軽バンなど約3万2千台の軽貨物車両も保有している。軽貨物は届け出制のため、今回の事業許可取り消し処分の直接的な対象からは外れている。しかし、国土交通省は軽バンの点呼についても立ち入り監査を継続しており、その結果がまとまり次第、「車両使用停止」などの処分が日本郵便に科される見通しだ。国交省は25日、こうした監査による処分に先立つ形で、現在走行している軽バンなどの安全対策を徹底するよう求め、軽貨物事業に関しても貨物自動車運送事業法に基づく安全確保命令を発令した。日本郵便は、7月中に改善策を提出し、その実施状況を定期的に報告することが求められている。
事業継続に向けた日本郵便の代替輸送策
事業許可取り消しにより使用できなくなる一般貨物約2500台について、日本郵便は代替輸送策を講じている。全体の約24%にあたる輸送量は、子会社である日本郵便輸送に委託する方針だが、そのうち9割以上は郵政グループ外の業者に再委託される予定だ。また、約34%の輸送量は、ヤマト運輸や佐川急便、西濃運輸といった同業他社に委託する方向で調整が進められている。残りの約42%については、自社が保有する軽貨物車両で代替輸送を行うとしている。
子会社への指示と総務省命令の詳細
日本郵便が引き続き一般貨物を扱う子会社に業務を委託することで、事実上の「処分逃れ」とならないよう、国交省は子会社である日本郵便輸送に対しても指導を強化している。日本郵便輸送は、適切な点呼を行うなどの再発防止策を講じ、その実施状況を定期的に報告することが求められている。一方、郵政事業を監督する総務省が日本郵便に出した「監督上の命令」は、日本郵便株式会社法に基づく最も重い処分であり、2019年のかんぽ生命不正販売問題に続いて2度目となる。この命令では、今回の処分が郵便・物流事業に与える影響を最小限にとどめ、国民生活に不可欠なユニバーサルサービスの確実な提供を求めている。日本郵便はサービスの状況などを当面の間、総務省に報告する必要がある。
日本郵便は今回の行政処分等を厳粛に受け止めるとコメント。運送事業者として、確実な点呼の実施をはじめ、運行の安全及び運転者・お客さまの安全を確保する体制構築を徹底し、信頼回復に全力で取り組む姿勢を示している。