近年、日本各地で財務省に対する批判や「財務省解体」を訴えるデモが散発的に見られるようになっている。これらのデモに参加するのは、主に物価高や将来への不安、そして政府の財政政策への強い不満を抱える人々だ。彼らの怒りは、日本の財政や経済政策を司る財務省に向けられている。しかし、彼らの訴えには具体的な政策提言が少なく、感情的な不満の表明に留まっている側面も指摘されている。この動きの背景には、国民民主党が提起した「103万円の壁」問題に対する財務省の姿勢や、長年にわたり囁かれてきた財務省陰謀論の影響があるとされる。ここからは、物価高や社会保険料など国民負担率の増加にあえぐ「中流貧民」と呼ばれる層の不満と怒りが鮮明に見えてくる。
物価高や増税に不満を訴える財務省前デモ参加者の様子
中流貧民にとって財務省はなぜ「敵」なのか？
デモの参加者からは、財務省を「敵」とみなす声が聞かれる。「減税こそが日本経済を良くする道なのに、財務省が自分たちの利権を守るために邪魔をしている。故・森永卓郎さんが言っていたように、もはや彼らはカルト宗教だ」。4月、財務省前で森永卓郎氏の写真を掲げていた50代の自営業男性はこう語った。彼は、財務省が「103万円の壁」撤廃の動きを阻止しようとしていると知り、デモに参加するようになったという。
経済デモとしての財務省批判
この財務省解体デモを、経済的な不満をぶつける「経済デモ」として分析する専門家がいる。メディア論を研究する成蹊大学の伊藤昌亮教授だ。伊藤教授は、これらのデモ参加者が「強いイデオロギーではなく、自分たちのお金を守るために行動している」と指摘する。企業に賃上げを求めるメーデーのような伝統的な経済デモに対し、財務省デモは政府（特に財務省）を直接糾弾することで「減税しろ」「社会保険料負担を下げろ」と訴える点に特徴がある。
さらに伊藤教授は、従来の賃上げデモが比較的恵まれたホワイトカラー層の運動であったのに対し、財務省デモは「下流域」に位置する非正規雇用者や自営業者たちの闘いだと分析する。これらの人々は、賃上げを要求する明確な相手がいなかったが、財務省という「敵」を見つけることで、経済的な苦境や不満をぶつける場を得たと見ている。
結論：経済苦境が新たな抗議活動を生む
一連の財務省デモは、単なる政治批判に終わらず、物価高や負担増に苦しむ「中流貧民」層の経済的な叫びとして捉えることができる。彼らにとって、政府、特に財務省は自らの生活を圧迫する存在と映り、その不満がデモという形で噴出している。これは、経済的な苦境が新たな形の社会運動を生み出している現代日本の状況を反映していると言えるだろう。
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