自営業者やフリーランスが加入義務のある国民健康保険の負担を不当に回避する新たな手口が横行していると報じられ、波紋を広げています。特に、その手法に日本維新の会の地方議員が関与している疑いが浮上し、党は調査に追われています。国民の社会保険料削減を訴えてきた維新が、自身らの保険料を下げるスキームに関わったとされる批判に対し、説明が求められています。
自営業者の社会保険料を「最低水準」に抑える手口とは
問題の中心となっているのは、2021年9月に京都市下京区で設立された「一般社団法人E(仮名)」と呼ばれる法人です。この法人の登記簿には、維新所属の国会議員や地方議員と同姓同名の人物が複数、理事として名を連ねています。
この疑惑は、12月10日の大阪府議会で自民党の占部走馬府議が質疑の中で暴露しました。占部府議によると、通常、国民健康保険に加入する個人事業主や企業に属さない人々が、この一般社団法人を介して「最低額の社会保険」に加入し、その費用を抑える手口があるといいます。
具体的な手口は以下の通りです。
- 理事就任と少額報酬: 一般社団法人が自営業者を理事として迎え、ごく少額の「理事報酬」を支払います。これにより、自営業者は社会保険の加入資格を得ます。
- 社会保険料の負担: 一般社団法人は、この低額報酬に応じた最低水準の社会保険料のうち、会社負担分を国に納めます。
- 「協力金」の徴収: その後、自営業者から理事報酬と社会保険料の自己負担分に「取り分」を上乗せした「協力金」を受け取ります。
このスキームにより、自営業者は本来支払うべき国民健康保険料を大幅に削減でき、一般社団法人側も「取り分」を得るという仕組みです。
「脱法ビジネス」との指摘と維新の関与
占部府議は、この手法を「実質的な制度の悪用」と強く批判しています。自営業者が社団法人の理事として行う「業務」がアンケートの回答程度しかない場合もあり、「本来の趣旨を外れた脱法的運用」であるとの指摘が出ています。
占部府議が維新代表である吉村洋文知事に対し、この脱法的な制度を規制するよう働きかけを求めた際、吉村知事は「ご指摘の事案が不正であれば、当然許されるものではない」と応じました。その後、占部府議は維新関係者の関与を公表。この手法の広がりを知ったのは、ビジネス交流会で勧誘を受けた人物からの相談がきっかけであり、その際、「維新の会の議員も多く利用しているので問題ない」と説明されたといいます。
勧誘者が示した法人の登記簿を取り寄せた結果、代表理事は維新の会の衆議院議員の元公設秘書であり、県議選の公認候補者でもありました。さらに、理事は660名にものぼり、その中には維新の会所属議員と同姓同名の人物が複数確認されたとのことです。
集英社オンラインの調査でも、このE法人の登記記載内容には、維新所属の国会議員および地方議員6名と同姓同名の人物が理事欄に名を連ねていたことが判明しています。
大阪府議会で国民健康保険料の不当な支払いを回避する手口について質疑が行われた
疑惑に対する維新の対応と今後の課題
国民の社会保険料負担軽減を公約に掲げてきた維新に対し、この疑惑は「自分たちの保険料だけを下げるスキームを開発したのか」という厳しい批判に直面しています。党は現在、この問題に関する調査を進めており、その結果と対応が注目されます。
このような制度の「抜け穴」を利用したとされる行為は、社会保険制度の信頼性を揺るがし、公平な負担を求める国民感情に反するものです。今後、維新の調査結果が待たれるとともに、同様の手口を防ぐための制度改正や法規制の必要性が議論されることとなるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 「またも維新…国保逃れ疑惑の手口とは」 (2025年12月20日掲載)





