2024年に生まれた赤ちゃんの数が70万人を割った日本。この少子化トレンドは韓国、台湾、そして中国でも進行しており、各国の経済に暗い影を落としている。かつて「世界の成長センター」と呼ばれた東アジア地域は、その称号の返上を迫られる事態に直面している。主要なキーワードである少子化、人口減少、東アジア経済の関連性がこの問題の中心にある。
かつての「世界の成長センター」東アジア
国際通貨基金(IMF)の推計によると、日本のGDP(国内総生産)は2025年にインドに抜かれ、米国、中国、ドイツ、インドに次ぐ世界5位になる見通しだ。東アジア地域は、長らく世界の経済成長を牽引する存在であった。その繁栄の先駆けとなったのは、1950年代半ばから70年代初頭にかけて「日本の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現した日本である。日本は1968年には当時の西ドイツを抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国へと上り詰めた。
1960年代半ばからは、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれた韓国をはじめ、台湾、香港、シンガポールの「アジア四小龍」が相次いで高度成長を達成し、日本の後を追った。巨大な経済体である中国の本格的な離陸は、1970年代末に鄧小平氏が主導した「改革開放」政策から始まる。内乱状態とも言える文化大革命(1966〜1976年)で疲弊していた中国経済は、およそ30年後の2010年には日本を抜き、世界第2位の経済大国へと躍進した。
一方、日本は1990年代初頭のバブル崩壊以降、「失われた30年」と呼ばれる長期停滞期に突入し、中国と入れ替わるように「成長センター」としての役割から後退した。日本の名目GDPの世界シェアは、1995年の17.5%がピークであり、直近では約4%にまで縮小している。2024年にはドイツに再び追い抜かれ、世界第4位に後退するという事態を迎えている。
高度成長の後に続く人口動態の変化
日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに、2011年以降は一貫して減少が続いている。年間出生数は2022年に80万人を割り込み、2024年には70万人を下回るなど、少子化が加速している。これは1899年に統計が開始されて以来の最低記録を更新し続けている状況だ。
かつて日本の高度経済成長に倣った近隣諸国が、人口動態においても日本の後を追うかのようなパターンを見せているのは、偶然ではない。韓国の総人口は、2020年の5176万人から2年連続で減少した。2023年には一時的に外国人の流入増により微増したが、出生率が世界最低レベルであるため、人口減少傾向が変わる可能性は低い。台湾の人口も、2019年の2360万人をピークに3年連続で減少。2023年に外国人要因でわずかに増加したが、2024年には再び減少に転じている。
長年にわたり世界最多の人口を擁していた中国も、「一人っ子政策」(1979〜2015年)を廃止した後も出生率が改善せず、2021年の14億2643万人をピークに3年連続で人口が減少している。国連の推計では、2023年にはインドの人口が中国を上回ったとされる。中国の名目GDPの世界シェアも、2021年の18.3%をピークに、直近では16%台に落ち込んでいる。このように、東アジア主要国における人口減少と少子化は、経済成長の鈍化と密接に関連している。
韓国ソウルでの民間防衛訓練に参加し、救命救急法を学ぶ子供たち(2023年)
東アジア諸国が直面する少子化と人口減少は、労働力不足、国内市場の縮小、社会保障費の増大など、多岐にわたる経済的課題を引き起こしている。これは、これらの国々がかつて享受した急速な経済成長を維持することを困難にしている主要因の一つであり、東アジアが「世界の成長センター」としての役割を見直さざるを得ない状況を示唆している。
まとめ
東アジア地域は、日本を筆頭に韓国、台湾、中国といった主要経済圏で深刻な少子化と人口減少に直面している。これらの人口動態の変化は、かつて奇跡的な経済成長を遂げたこの地域の経済構造に変革を迫り、成長の鈍化という形で顕在化している。GDPランキングの変化や世界シェアの縮小は、この構造的な問題の表れと言える。東アジアが持続的な経済発展を遂げるためには、少子化・人口減少という根本的な課題への対策が喫緊の課題となっている。