イスラエルによる前例のない攻撃は、イランの長年培ってきた「無敵」というイメージをわずか数時間で打ち砕いた。このイスラエル攻撃後のイラン国内情勢は緊迫しており、政権の脆弱性が露呈しただけでなく、国民への締め付け強化が懸念されている。イラン領の奥深くへの突如の攻撃は、イランの安心感を打ち砕き、これまで慎重に築かれてきた強者のオーラをはぎ取った形だ。
崩れ去った「強者」のオーラ
12日間に及んだ衝突中、イランはイスラエルに報復攻撃を繰り返し、テルアビブのような主要都市に広範な被害をもたらし、28人を死亡させたとされる。この応戦能力は国内で一部称賛され、政権に批判的な人からも評価する声が上がった。だが、多くのイラン国民が懸念するのは次の展開だ。政権による国内の「イスラエルの協力者」と見なされる人物の摘発の動きが既に始まっている。
イスラエル攻撃後、テレビでメッセージを発するイラン最高指導者ハメネイ師
国内情勢の緊迫化と弾圧強化
イラン当局は既に、「イスラエルの手先」と見なされる人物の摘発に動き出している。国営系ファルス通信によると、当局は25日までに、この容疑で700人以上を拘束した。この動きは、改革派や体制変革を望む人々に対する弾圧が差し迫っているとの懸念を一層強めている。「負傷した政権が国民に牙をむき、政治や市民のための空間が一段と狭まること」が心配されている可能性が高いと指摘されている。
影を潜める最高指導者
中東で最も長く指導者の地位にあるイランの最高指導者アリー・ハメネイ師は、現在地下壕に身を潜め、外部との通信がほとんどできない状態にあるとされる。24日にイスラエルとイランが停戦に達して以降、まだ公の場に姿を見せていない。ハメネイ師は35年あまり強権的な統治を敷き、少なくとも2005年から国内の抗議活動を幾度となく鎮圧してきた歴史を持つ。
専門家が警告する高まる弾圧リスク
米ニューヨークを拠点とするイランに関する著書もある専門家アラシュ・アジジ氏は、現在の状況について警告を発している。アジジ氏はCNNの取材に対し、今後の弾圧が一層厳しくなる可能性を示唆した。同氏の見方では、国外の反体制派は「無力で政治的影響力に乏しく」、国内の市民社会も「守勢に立たされている」状況にある。
強まる保守派の影響力と改革派の不確実性
今回のイスラエルによる攻撃は、西側諸国やイスラエルは信用できず、交渉はイランを弱体化させるための戦術に過ぎないと考えてきた国内の保守強硬派を一層勢いづかせたとの専門家の分析もある。これにより、比較的穏健な改革派や現実路線派の立場は不透明な状況に置かれている。指導部内の今後の権力構造の変化を彼らが乗り切れるかどうかは、時間を経ないと分からない状況だ。
イスラエルによる攻撃は、イランの威信を傷つけただけでなく、国内の権力バランスと市民生活に深刻な影響を与えつつある。政権による「協力者」摘発や弾圧の動きは、既に脆弱な市民社会をさらに追い詰める可能性が高い。停戦後もなお、イラン国内情勢の不確実性と緊張は続いている。
参照元
CNN – Iran’s image of invincibility is shattered as its leaders hide