京阪HD会長 加藤氏が語る:万博・IR見据え、大阪「東西軸」強化戦略

大阪市西部の人工島・夢洲で開催中の大阪・関西万博が注目を集め、その後の跡地活用や2030年秋開業予定のIR(カジノを含む統合型リゾート)への期待が高まっています。これら未来の拠点へのアクセスを担う交通網、特に大阪の西と東を結ぶ「東西軸」の重要性が増しています。京阪ホールディングス(HD)の加藤好文会長は、この東西軸の整備・強化を今後の重要戦略と位置づけています。万博の順調な進捗とともに、京阪HDが描く京都から夢洲までをつなぐ壮大な構想、そして地域再開発を通じた都市機能の強化について、加藤会長が語った内容をもとに詳報します。

京阪HDの「東西軸」強化への取り組み

京阪HDが東西軸の拡充に重点を置く背景には、夢洲を中心とした大阪湾岸エリアのポテンシャルと、万博・IRが開業にもたらす広域的な影響があります。従来の大阪の都市構造は、御堂筋や谷町筋に代表される「南北軸」が中心であり、大規模開発も梅田(キタ)からなんば(ミナミ)を結ぶこのラインに集中してきました。しかし、夢洲開発は、これまで相対的に注目されてこなかった東西方向への人の流れや物流を大きく変える可能性を秘めています。

中之島線延伸計画の要:九条駅

この東西軸戦略の中心となるのが、京阪中之島線を西へと延伸し、大阪メトロ中央線と阪神電気鉄道が交差する九条駅(大阪市西区)へ接続させる計画です。この延伸により、京都から京阪線を利用して中之島線を経由し、九条駅で大阪メトロ中央線に乗り換えることで、直接夢洲へアクセスできるようになります。

京阪ホールディングス会長 加藤好文氏、大阪・関西万博とIRに向けた東西軸強化戦略を語る京阪ホールディングス会長 加藤好文氏、大阪・関西万博とIRに向けた東西軸強化戦略を語る

九条駅は、単に夢洲への玄関口となるだけでなく、阪神電車や相互乗り入れを行う近畿日本鉄道(近鉄)への乗り換えが可能となるため、神戸方面や奈良方面など、関西広域への交通結節点としての潜在力も非常に高いと加藤会長は指摘します。この九条駅を核とした交通ネットワークの強化は、関西全体のアクセス性を向上させ、広域観光やビジネス交流の活性化に大きく貢献すると期待されています。

交通網整備と一体となった地域再開発

東西軸の魅力を高めるためには、鉄道の延伸だけでなく、沿線地域の再開発を進め、集客力を高めることも不可欠です。特に九条エリアでは、万博やIRを契機に増加が見込まれる国内外からの来訪者を想定し、ホテルや商業施設の開発が進められる方向です。広大な敷地が確保できれば、アリーナなどの大型集客施設も視野に入ります。京阪HDは、これらの開発にあたり、地元商店街をはじめとする地域住民との対話を重視し、共通の将来像を描く努力を続けています。

また、大阪市内の東西軸の東端に位置する京橋エリアでも、IR開業による外国人来訪者の増加を見込み、医療ツーリズムの拠点整備を検討するなど、沿線各所で特色ある開発を進める方針です。

京阪中之島線延伸計画の路線図、夢洲への交通網整備を示す京阪中之島線延伸計画の路線図、夢洲への交通網整備を示す

これまで大阪の都市開発を牽引してきた南北軸に対し、夢洲開発を機に東西軸が新たな開発の主軸として浮上しています。京阪HDの戦略は、単なる鉄道事業に留まらず、都市全体の構造変化を見据えた広範な地域開発であり、未来の大阪、そして関西の発展を左右する重要な一歩と言えるでしょう。

京阪HDの東西軸強化戦略は、大阪・関西万博およびIRを最大限に活かし、夢洲を核としたベイエリアと都心、さらには京都や関西各地を結ぶ新たな交通・交流ネットワークを構築しようとするものです。この取り組みが、大阪の都市構造に歴史的な変革をもたらし、関西経済の活性化に大きく貢献することが期待されます。