千葉市で歯科医院を経営していた歯科医師が、患者から治療費などをだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕されました。この問題は、本誌が昨年7月末に初めて報じてからおよそ1年を経ての展開となります。逮捕されたのは「高橋デンタルオフィス(TDO)」元院長、高橋仁一容疑者(58)です。患者から金銭だけでなく、時には健康な歯まで奪ったとされる同容疑者の逮捕は、多くの関係者に衝撃を与えています。
高橋仁一容疑者、詐欺容疑で逮捕される
千葉県警は6月19日、高橋仁一容疑者を詐欺の疑いで逮捕しました。容疑は、インプラント治療費が後に全額返還されるなどと偽り、患者から現金を詐取したというものです。逮捕時の高橋容疑者の住所は茨城県古河市と報じられており、そこで知人の歯科医の仕事を手伝っていたとみられています。
患者から200万円を詐取した手口とは
逮捕容疑となったのは、2021年3月に千葉県内に住む50代の女性患者に対して持ちかけられた話です。高橋容疑者は、女性の歯の治療データを学会で使用させてもらえれば、インプラントメーカーから治療費が全額戻ってくると提案。その条件として、女性が既に前払いした治療費200万円に加え、同額の「協力金」を現金で支払うよう求めました。
これは虚偽の話でしたが、女性は同年12月末と治療完了時の2回に分けて全額が返還されるという契約書を交わし、高橋容疑者に200万円を渡しました。しかし、治療は血液検査以外に進まず、期日を過ぎても金銭は返還されませんでした。女性が問い詰めると、高橋容疑者は「スイス製のインプラントが輸入できない」などと様々な言い訳を繰り返し、最終的には2023年までに音信不通になったといいます。
高橋仁一容疑者 千葉市の歯科医師 詐欺容疑で逮捕
1億円超確実の被害総額と、その他の金銭トラブル
この「協力金詐欺」に加え、本誌は過去に健康な歯を抜かれたり、治療が完了しなかったりといった複数の患者事例や、高橋容疑者が総額約19億円もの負債を抱えて破産していた事実を報じています。
現在、県警には高橋容疑者による同様のインプラント治療に関する詐欺被害が十数人の患者から申告されており、その被害総額は1億円を超えることが確実視されています。さらに、これとは別に、高橋容疑者が患者やその知人に対して「歯科器材の購入費を貸してほしい」「有利な投資がある」などと持ちかけた金銭トラブルに関する相談が約70件寄せられており、県警はすでに複数の被害届を受理している状況です。
被害男性の一人は、これまでの経緯を語る中で深いため息をつきました。だまされた患者たちは「被害者の集い」を結成し、逮捕前から高橋容疑に説明を求めてきたといいます。昨年7月のTDO閉院後は行方不明の状態でしたが、債権者集会には姿を見せていました。逮捕された際の住所が古河市だったことについては、「まさかそんなところに雲隠れしていたのか」と驚きを隠せない様子でした。
今回の逮捕を機に、高橋容疑者による一連の詐欺行為や金銭トラブルの全容解明が進むことが期待されます。