子供の頃、誰しも恐竜に夢中になった経験があるだろう。そんな恐竜に関するすべてを深く学べる、日本初の「恐竜学部」が福井県立大学に今年4月開設された。そのユニークな学びの内容と学生生活に迫るべく、密着取材を行った。県からの発表以降、そのインパクトのある名称で大きな話題を呼び、学部入試は前期7.3倍、後期27.3倍という狭き門となった。
福井県大野市にある巨大なティラノサウルスのモニュメント。新設された恐竜学部に関する記事のイメージ。
学部の概要と人気の背景
この「恐竜学部」に全国から集まった第1期生は34名で、男女の内訳はそれぞれ17名ずつとなっている。開設初年度にもかかわらず、入試の志願倍率は前期日程で7.3倍、後期日程では27.3倍に達するなど、その注目の高さが伺える。なぜ、これほどまでに人気を集めているのか、そして学生たちはどのような学びを得ているのだろうか。
日本屈指の発掘現場での実践的な学び
学生たちの実際の学びの様子を見るため、ある日の授業に同行した。集合場所は大学キャンパスのバスロータリーで、時刻は早朝7時。学生たちと共にバスに乗り込み向かった先は、福井県勝山市北谷町にある露頭だ。ここは、日本で最も多くの恐竜化石が発掘されている場所であり、特に福井県で見つかった恐竜として知られる「フクイラプトル」の化石が出土したことでも有名な地である。この日最初の授業は、この露頭で行われるフィールドワークだった。作業着にヘルメット、ピッケルという本格的な装備に身を包んだ学生たちが、教員の先導に従い、一般には立ち入りが制限されている露頭の近くに集まった。教員からは「露頭には古代の地球に関する多くの記録が残されています。これを観察し、スケッチすることで、地層から数億年前の環境や古生物の痕跡を読み解く練習をします。落ちている岩石も実際に割って、ルーペで細部をじっくり確認してください」と説明があった。あいにくの雨で実習時間は短縮されたが、巨大な露頭を目の当たりにし、恐竜の足跡の痕跡を初めて間近で見た学生たちは、興奮した様子だった。実習後、ある学生は「座学だけでは分からなかった細かい粒子の違いなど、石を割ることで実際に見て学ぶことができて勉強になりました」と語ってくれた。
福井県立大学恐竜学部の学生がフィールドワーク中に化石（岩石）を見つけ喜んでいる様子。勝山市での発掘実習風景。
今回密着したフィールドワークのように、福井県立大学恐竜学部では、単なる座学に留まらず、日本有数の発掘現場で実際に手を動かし、地球の歴史や古生物について肌で感じる学びを重視しているようだ。開設初年度から高い注目を集めるこの学部での学生生活は、恐竜への情熱を持つ彼らにとって、まさに「恐竜王国」ならではの貴重な体験となるだろう。
