日中水産物輸入停止報道で外務省が共同通信に強い不信感

中国から日本への水産物輸入停止を巡り、外務省内部で共同通信の報道に対する不信感や反発が渦巻いていることが明らかになりました。日中間の対立が深まる中、メディアの報道が引き起こした混乱、そして外務省が抱く怒りの背景には何があるのでしょうか。本稿では、高市早苗首相の国会答弁をきっかけとした一連の出来事と、政府発表と報道の食い違いの真相に迫ります。

高市首相答弁と日中関係の緊張

日中関係は、高市早苗首相(当時)が台湾有事に関する「存立危機事態」について国会で答弁した11月7日以降、緊張が高まっていました。中国政府の対応は次第に強硬化し、両国間の摩擦が増大する事態となっていました。

このような状況下、外務省の金井正彰アジア大洋州局長が中国を訪問。11月18日には中国外交部の劉勁松アジア司長と協議を行いました。この際、金井局長が頭を下げる一方で、劉司長がポケットに手を入れた態度を見せたことが、再び物議を醸しました。

共同通信の速報と政府の否定

日中関係が緊迫する中で、11月19日、日本の水産物輸出に関するニュースが世間を騒がせます。発端は、同日午後1時過ぎに共同通信が配信した速報でした。同通信は「中国が日本産水産物の輸入停止と通達」と報じ、「中国政府が日本産水産物の輸入を停止すると日本政府に通達したことが19日、分かった」と伝えました。さらに、その後の詳細記事では、政府関係者が「19日朝に正式な外交ルートを通じ連絡があった」と説明したと報じています。

この共同通信の一報を受け、複数の民放やNHKなども相次いで「輸入停止」を速報しました。しかし、その日の午後4時から行われた定例会見で、木原稔官房長官(当時)は「(輸入停止について)中国政府から連絡を受けたという事実はない」と明確に述べ、報道内容を全面否定しました。これにより、政府の公式発表と主要メディアの報道が真っ向から食い違う異例の事態が発生したのです。

金井正彰外務省アジア大洋州局長と劉勁松中国外交部アジア司長が協議する様子金井正彰外務省アジア大洋州局長と劉勁松中国外交部アジア司長が協議する様子

外務省内部の不信感と混乱の真相

政府による報道の否定を受け、外務省内部では共同通信に対する強い不信感と怒りの声が沸き起こっています。共同通信社は質問状に対し、「取材の経緯を詳細にお答えすることはできませんが、複数の政府関係者から確認し、報道しました」と回答しました。

しかし、外務省関係者らは、このような誤報が日中間の外交問題に与える影響や、国民の間に不必要な混乱を招くことへの懸念を表明しています。「週刊文春 電子版」の報道によれば、外務省が抱えるマスコミへの疑念と怒り、そして一連の混乱の真相について詳細なリポートがなされています。今回の事態は、メディアの報道姿勢と、国際関係における情報の正確性の重要性を改めて浮き彫りにしています。


参考文献:

  • 「中国が日本産水産物の輸入停止と通達」を巡る外務省内部の不信感について:週刊文春 電子版オリジナル. (2025, November 24). 週刊文春.
  • [画像] 外務省の金井局長とポケットに手を入れる中国の劉氏. (2025, November 24). 週刊文春.