中国が台湾に侵攻し、米国もそこに介入した場合、その戦争に巻き込まれるのはどの国か。英国の政治経済誌「エコノミスト」が専門家たちの見解をもとに予測する。
【画像】台湾の船がハイジャックされたという想定で、アクロバティックにデッキに這い上がる特殊部隊員たち
「誰もが見て見ぬふりをする大きなタブーがあります。中国が大規模な軍事作戦を決行する日のことです」
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、シンガポールで5月末に開かれたシャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)で各国防衛の要職にある聴衆にそう語った。
ではそのような戦争が始まったら、フランスは初日から介入するのか。マクロンはしばし考え込んで言う。
「現時点では極めて慎重であろうとするでしょう」
マクロンのこの矛盾した態度は、広く共有されたものだ。中国が台湾に侵攻したら他の国々はどう立ち回るのかなど、明確なことは誰にもわからないからだ。
米国が介入する場合に最も影響される2国
その問題を分析しているのが、米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」による新たな論文だ。米国がその戦争に関わらないとすれば、他国も同様に関わらないだろうとその論文は示している。
ピート・ヘグセス米国防長官はアジア安全保障会議で、その考えを払拭しようとしてこう語った。
「中国が武力によって台湾を征服しようとすれば、破滅的な結果に終わるだろう。われわれの目標は戦争を防ぎ、戦争の代償を高すぎるものにすることだ」
だが実際のところ、アジアの同盟国の多くは、この問題をめぐって米国がさらにぐらつくことを懸念している。
米国のドナルド・トランプ大統領は、台湾の支援に駆けつける前に「いろいろ交渉しなければならない」と2024年に発言した。台湾にはおそらく勝ち目がないと見る向きも米国防総省内にはある。
米国が介入するとなれば、日本とフィリピンの2国が最も深刻な影響を受ける同盟国になるだろう。だが、どちらの国も直接的な関与については乗り気でないはずだ。
日本が参戦するとしても、海底パトロールやミサイル攻撃以上のことをする可能性は低いとCNASはその論文で主張している。
台湾に暮らす国民が17万5000人いるフィリピンは、なお慎重になるだろう。だが、中国の軍隊が行き詰まった場合、フィリピンは中国との領有権争いが多数ある南シナ海で領土を横取りする誘惑に駆られるかもしれないと、論文執筆者たちは示している。
これらすべては、中国が米国の介入を阻止すべく、この2国にある米軍基地を先制攻撃するのか、あるいは、米国が中立性を確保することを期待して、中国が自制するのか次第だろう。
The Economist