日本各地で増える「廃墟モール」の謎:横浜・本牧の商業施設がたどった衰退の道

日本全国で、かつて賑わいを誇ったショッピングモールが、人影まばらな「廃墟モール」と化す現象が目立っています。かつての繁栄から一転、なぜこれらの商業施設は衰退の一途を辿るのでしょうか。本稿では、その一例として横浜市中区本牧にある「ベイタウン本牧5番街」を取り上げ、その現状と背景にある要因を探ります。

バブル絶頂期の栄華と「マイカル本牧」の誕生

「ベイタウン本牧5番街」は、隣接する「イオン本牧店」と共に、もともと「マイカル本牧」という一大商業施設の一部でした。この「マイカル本牧」は、バブル経済が最も熱を帯びていた1989年に、大規模商業施設として鳴り物入りでオープンしました。当時としては珍しいスパニッシュ・コロニアル風の異国情緒あふれる外観は、多くの人々を惹きつけ、横浜中華街や山下公園といった観光地からもアクセスしやすい立地で、地域のランドマークとしての役割を担っていました。「イオン本牧店」の広場に残る噴水やからくり時計は、当時の華やかさを今に伝える数少ない名残です。

バブル期に開業し、現在では寂れた「廃墟モール」となった商業施設の外観バブル期に開業し、現在では寂れた「廃墟モール」となった商業施設の外観

現在の状況:テナント撤退が相次ぐ異空間

しかし、時が経ち「ベイタウン本牧5番街」に足を踏み入れると、その光景は一変します。フロアのいたるところで目につくのは、シャッターが下ろされたままの「空き区画」の数々です。2階にはサイゼリヤとマックハウスが営業を続けるものの、残りの区画はほとんどが空洞化しています。空いたスペースにはクレーンゲームなどのゲーム機が無造作に並べられ、そのBGMだけがやけに大きく響き渡る光景は、商業施設としての活気を完全に失った異様さを醸し出しています。中央の吹き抜けにも人の気配はなく、ゲーム機が置かれているだけです。

3階に至っては、ベネッセの英語教室「BE studio」の一店舗が営業しているのみ。かつてフロアの大部分を占めていたダイソーも、「9月28日をもって閉店いたしました」という貼り紙を残して撤退しました。時折流れる「当店はきめ細やかなサービスで皆さまの豊かな暮らしを応援しております。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ」という館内放送は、店舗がほとんどない現状と乖離し、訪れる者に奇妙な感覚を与えます。

衰退の背景にあるもの

横浜・本牧の「ベイタウン本牧5番街」が示す廃墟化の現象は、単なる一施設の衰退に留まりません。これは、日本の地方都市や郊外において、バブル期に建設された大型商業施設が直面する共通の課題を浮き彫りにしています。出店競争の激化、消費行動の変化、人口減少、そして地域経済の構造変化など、複数の要因が複雑に絡み合い、かつての賑わいを奪い去っているのです。この連載では、今後さらに詳細な分析を通じて、廃墟モールが生まれる深層的な理由を紐解いていくことになります。


参考文献:
Source link