「アンパンマン」の生みの親として国民に愛される漫画家、故やなせたかしさん(1919〜2013年)。その故郷である高知県南国市後免町が、2025年4月開始のNHK連続テレビ小説「あんぱん」の舞台の一つとして注目されています。晩年、故郷の活性化に尽力したやなせさんの想いを継ぎ、町はどのように変化しているのか。最新の観光状況を探るべく、地元のガイドツアーに参加しました。
やなせたかしと故郷・後免町:晩年の尽力と新たな息吹
やなせさんは、幼少期を過ごした後免町から長く離れていましたが、84歳の時に一通の小学生からの手紙を機に約70年ぶりに故郷を再訪しました。これをきっかけに、亡くなるまでの約10年間、氏は寂れた後免町を元気づけようと、地元の人々と共に様々なアイデアを出し合い、その再生に力を注ぎました。「やなせたかしロード」の命名、生姜地蔵の建立をはじめ、音頭や浴衣、手拭い、靴下まで制作するなど、故郷の「一生懸命」な取り組みに応え続けました。故郷を思う氏の熱意は、地元の人々を動かし、多くの企画が実現しました。そして、やなせさんと妻暢さんをモデルにした朝ドラ「あんぱん」の放送開始は、南国市などによる町全体の整備をさらに加速させています。
ドラマ「あんぱん」効果で注目される観光スポット
後免町への玄関口であるJR後免駅は、高知駅からJR土讃線で約5駅の場所にあります。駅前には2025年3月30日に完成したばかりのシンボルロードが延びており、そこから徒歩5分にプレハブ建ての新しい観光案内所が見えてきます。これは南国市観光協会が運営しており、2025年3月21日にオープンしたばかり(2026年2月までの設置予定)の後免町観光の新たな拠点です。ここが、やなせさんゆかりの地を巡る定時観光ガイド「ごめん・ありがとうコース」の出発点となります。ガイドツアーは土日祝日に開催され、午前10時、11時、午後1時、2時の1日4回(所要時間60分)実施されており、参加費は500円です。
南国市後免町に新設された観光案内所外観、やなせたかし関連観光の拠点
地元ガイドと巡る、やなせワールドの魅力
「ごめん・ありがとうコース」の案内は、地元の南国市観光案内人の会メンバーが担当します。現在35名が所属し、このコースのために昨年から16名が新たに養成されました。今回の担当、大西久司さん(68歳)もそのお一人。元会社員の営業職だった経験を活かした分かりやすい説明が好評で、各地の観光にも詳しかったそうです。やなせさんと後免町の縁を知ったのは数年前に遡るとのことですが、そこから猛勉強し、やなせさんの著作を読み込み、今では後免町の歴史からやなせさんの人生まで、縦横無尽に語れるほどの知識を蓄えられています。やなせさんの故郷を案内する情熱を持ってガイドを務める大西さんの存在は、ツアーの大きな魅力となっています。
やなせたかしさんの深い故郷愛と、それに応える地元の人々の温かい気持ちが形となった後免町は、NHK朝ドラ「あんぱん」の追い風も受け、観光地として新たな段階を迎えています。歴史と温かい物語が詰まったこの町は、「ごめん・ありがとうコース」のようなガイドツアーを通じて、やなせワールドと共にその魅力を多くの訪問者に発信し続けます。やなせファンはもちろん、地域の再生に興味がある方も、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。