高市早苗首相の「台湾有事」に関する発言をめぐり、日本と中国の関係が悪化している。再開していた日本産水産物の輸入を中国が事実上停止し、日本関連イベントも相次いで中止になるなど、溝は深まる一方だ。答弁の撤回を求める中国は強硬な姿勢を崩さず、関係改善の糸口は見えない。国会で質問した立憲民主党の岡田克也元幹事長に対する批判も、一部で出始めている。中国問題に詳しい拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授や中国人実業家らは、この状況をどう見ているのか――。
【写真】「存立危機事態」についての発言が出た岡田議員とのやりとりは、こちら
* * *
■中国政府の反発は、尖閣諸島を国有化した時より…
悪化する日中関係について、日本で人材派遣業を営む中国人女性実業家は中国国内の様子をこう語る。
「高市早苗首相の名前をもじって『毒苗』と呼び、批判するまでになっています」
実際、国営通信の新華社は11月19日、「高市『毒苗』はどのように育ったのか」という記事を公式サイトに掲載。高市氏がこれまで何度も靖国神社に参拝したことに触れ、「日本の侵略戦争の歴史を軽視し、美化している」と批判した。
対立のきっかけは、高市氏が7日の衆院予算委員会で行った発言だ。中国による台湾の海上封鎖が発生した場合の事態認定をめぐり、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても(集団的自衛権を行使できる)存立危機事態になり得るケースだ」と述べた。立憲の岡田氏の質問に対する答弁だった。これまでの政権は、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」について台湾有事と関連付けて明言してこなかったため、波紋が広がった。中国側は内政干渉だとして強く反発し、中国の薛剣・駐大阪総領事がSNSに「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と投稿する騒動も起きた。
拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授は中国政府の対応を分析する。
「今回の中国政府の反発は、2012年に尖閣諸島を国有化した時よりも激しいと感じます。中国政府や国内メディアの言葉遣いも厳しく、日本に対するメッセージを内外に徹底的に植え付けようという意図が見えますね」。






