道路に設置されている自動速度違反取締装置、通称「オービス」は、悪質なスピード違反車両を自動で撮影し、検挙するための装置です。このオービスによって速度違反が確認されると、後日、違反者に対し「呼出状」や「連絡票」といった出頭通知書が送付されます。通知を受け取った場合、原則として違反が発生した場所を管轄する警察署に出頭しなければなりません。しかし、例えば沖縄や北海道など、居住地から著しく離れた旅先で違反してしまった場合、出頭はどのように扱われるのでしょうか。多くの人が抱くこの疑問に対し、警察の手続きと法的側面から解説します。
遠方での違反、出頭はどうなる?
結論として、たとえ遠方の地でオービスによる速度違反で検挙され、通知書が届いたとしても、原則的にはその違反を管轄する現地の警察署への出頭が求められます。これは、違反捜査や手続きが現地の警察によって行われるためです。しかし、地理的にあまりにも遠く、出頭が困難な事情がある場合は、例外的に出頭場所の変更が認められるケースも存在します。出頭場所の変更を希望する場合、まずは通知書を送付してきた警察署に連絡を取り、「遠方のため、そちらへの出頭が難しい」旨を具体的に伝える必要があります。状況や理由によっては、自宅から近い最寄りの警察署での手続きを調整してもらえる可能性があります。この調整は警察の判断によるため、必ずしも希望通りになるとは限りませんが、まずは相談することが重要です。
出頭を無視した場合の結末
では、「他県での違反だから、どうせ追ってこないだろう」と安易に考え、意図的に出頭通知を無視し続けた場合はどうなるのでしょうか。反則金や罰金を支払わず、度重なる出頭要請にも応じない状態が続くと、警察や検察は違反者が反則金制度による簡易な処理を放棄したと判断します。こうなると、事態は道路交通法違反の被疑事件として、正式な刑事手続きへと移行します。刑事手続きに切り替わった場合、警察による捜査が進められ、最終的には逮捕状が請求される可能性があります。逮捕状が発布されると、ある日突然、自宅に警察官が訪れ、逮捕状を提示された上で身柄を拘束される、という事態も起こり得ます。
道路に設置された自動速度違反取締装置(オービス)と、その存在を知らせる標識
逮捕後の流れと刑罰
もし逮捕された場合、まず警察署に連行され、被疑者として取り調べを受けることになります。その後、事件は検察に送致(送検)され、検察官による事情聴取が行われます。検察官は、捜査内容や被疑者の供述などを踏まえ、起訴するかどうかを判断します。起訴された場合、刑事裁判が開かれることになります。裁判で有罪判決が下されると、罰金刑以上の刑罰が科せられます。科される罰金額は、違反内容にもよりますが、必ずしも通常の反則金や罰金と大きく変わらないケースが多いとされています。しかし、刑事裁判の手続きが進む間、警察署の留置場や拘置施設に一時的に収容される可能性も否定できません。これは、比較的軽微とされる「青切符」が切られるような違反であっても同様です。出頭要請を無視し続ければ、たとえ青切符の違反でも逮捕される可能性は十分にあります。
青切符でも逮捕される?未出頭者追跡の実態
実際に、交通違反による未出頭者の追跡捜査は強化されています。例えば、東京都を管轄する警視庁では、毎年特定の期間を「交通違反長期未出頭の追跡捜査強化月間」と定め、集中的な捜査を行っています。報道によると、2024年6月に実施された強化月間では、追跡捜査によって292人が逮捕されましたが、このうち比較的違反が重いとされる「赤切符」の対象者はわずか20人でした。残りの大多数は、自転車の違反や一時停止違反など、通常は青切符で処理されるような比較的軽微な交通違反の違反者だったということです。このことからも、違反の種類に関わらず、出頭しないことのリスクがいかに高いかが分かります。
オービスに撮影されるような速度違反は、一般的に免許停止や10万円以下の罰金で済むことが多いです。しかし、その後の出頭を無視し、刑事手続きに移行してしまうと、逮捕や勾留といった身柄の拘束を伴う可能性が出てきます。そう考えると、通知を受けた際に真摯に出頭し、定められた手続きに応じることこそが、結果として最も「軽微」な対応で済ませる方法だと言えるでしょう。「遠方だから大丈夫だろう」という安易な考えは通用せず、むしろ事態を悪化させる危険性が高い現実を理解しておくことが重要です。