日々メディアから届けられる経済関連ニュースの洪水。その背後にある意図や状況を深く掘り下げることは重要です。本稿では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏の分析に基づき、日本の国民一人あたりカロリー摂取量の特異性と、それが食料安全保障や国家の効率性とどのように関連しているのかを考察します。
日本の国民は、世界的に見て非常に少ないカロリーしか摂取していないという驚くべき事実があります。これは、野菜、魚、大豆などの豆類を中心とした食生活と、油分を避ける傾向によるものと考えられます。健康的な食生活は摂取カロリーの抑制に繋がり、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。筆者の個人的な経験として、体重を継続的に記録することで、無意識のうちに摂取カロリーを管理し、体重を維持している事例も紹介されています。もちろん、健康はカロリーだけでなく脂質なども考慮する必要がありますが、カロリーは一つの重要な指標です。
日本は依然として世界有数のGDP先進国です。少ないカロリー摂取量でありながら、国民一人ひとりが相当なGDPを生み出しています。これは、日本の製造業における省エネや効率化が広く知られているように、国民の食生活においても極めて高い効率性を達成していることを示唆しています。
一人あたり摂取カロリーとGDPの相関図。日本の摂取カロリーが低いことを示す。
このような日本人の低カロリー摂取の実態は、現在の備蓄米放出問題や食料安全保障に対する一般的な見方とは異なる視点をもたらします。一つの意見として、カロリーベースの食料自給率が全てではないにしても、最低レベルのカロリー摂取量でありながら約38%しか自給できていない現状は、政府や農水省に対するより厳しい視線を必要とするのではないでしょうか。カロリーだけでなく、特に動物性タンパク質の自給率の低さにも焦点を当てるべきです。
一方で、仮に農作物が作れなくなり、かつ輸入も困難になった場合でも、日本人が飢えれば、日本が圧倒的シェアを持つ半導体ウエハーなども生産できなくなります。これにより、世界中の半導体生産が停止する可能性があるため、各国は日本を見放さないだろうという見方も成り立ちます。
もう一つの前向きな視点は、日本人の「省カロリーでありながら長寿命」という特性が、世界に対する最大の輸出コンテンツとなり得る可能性です。もし全世界の人々が日本と同程度の食料摂取量で活動できるようになれば、地球規模での食料問題の解決に貢献できるかもしれません。例えば、米国人が日本並みの食生活になれば、自然に体重が減り、健康的になれる可能性が考えられます。
さらに、日本はGDPの割に温室効果ガス(GHG)の排出も比較的少ない国です。これは、エネルギー効率が高い「理想の『ギリギリ国家』」とも形容できるかもしれません。最小の消費で、これほどの自動車等の製造物やアニメ等のコンテンツを生み出している現状は、特筆に値します。
結論として、日本は「最小の消費、最大の文化国」であると言えるかもしれません。この独自の効率性と食生活の関係性は、食料安全保障や国際的な役割を考える上で、従来の視点に加えて考慮すべき重要な要素です。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/0db31d9d41d4751d845aa87262f8ab93884a3f86