「ポスト石破」総裁選、茂木敏充氏の「強み」と「弱み」:政治部記者が分析

石破総理の辞任を受け、次期総裁選に向けた動きが活発化しています。「ポスト石破」を巡る政局の焦点となるのは、有力視される候補者たちの顔ぶれとその戦略です。中でもいち早く出馬の意欲を表明した茂木敏充前幹事長には大きな注目が集まっています。テレビ朝日政治部の大石真依子記者が、茂木氏の人物像、能力、そして総裁選における展望を詳細に分析します。

茂木敏充氏、異例のスピード出馬の真意

茂木敏充氏の出馬表明のスピード感は、関係者の間でも大きな驚きをもって受け止められました。会見で発せられた「私の全てをこの国に捧げたい」という言葉からは、総理の座への強い覚悟と決意が感じられます。来月70歳を迎える茂木氏にとって、今回の総裁選は自身が「ラストチャンス」と捉えている可能性が高いと大石記者は指摘します。前回の総裁選で埋没してしまったという反省も、今回の早期出馬の背景にあると茂木氏の側近議員は分析しており、他の候補者に先んじて存在感を示す狙いがあるようです。

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卓越した実務能力と豊富な経験

茂木氏の最大の強みは、その「ずば抜けた実務能力の高さ」にあります。これには政界内で定評があり、岸田政権で党の幹事長を務めただけでなく、過去には外務大臣や経済産業大臣といった主要な閣僚ポストも経験してきました。この豊富な「経験値」は、林芳正官房長官と並び、有力候補者の中でもトップクラスと言えるでしょう。各分野での実務をこなしてきた実績は、政策立案や実行力において彼の大きなアドバンテージとなります。

知名度と党員票獲得の課題

一方で、茂木氏の弱みとして挙げられるのが「知名度の低さ」です。各種世論調査を見ても、「次の総理」として名前が挙がってこないことが多く、党員票の獲得は容易ではないと見られています。国会議員票については、旧茂木派に所属する中堅・若手議員からの支持は固いものの、それ以外の層にどこまで支持を広げられるかが不透明であり、今後の茂木陣営の戦略が鍵となります。前回の総裁選では9人中6位という結果に終わっており、ここから巻き返しを図る必要があります。

「瞬間湯沸かし器」と呼ばれた男の意外な素顔と強み

茂木氏には「怒りの沸点が低い」というイメージがあり、官僚からは「瞬間湯沸かし器」と呼ばれることもあったと聞きます。しかし最近では、YouTubeやTikTokなどのSNSでの発信に力を入れ、近寄りがたいイメージの払拭に努めている印象です。

また、茂木氏には「映像記憶能力」があると言われています。大石記者が取材した際のエピソードでは、多くの記者が集まる会議の後、距離が離れていたにもかかわらず「現場にいたね」と声をかけられ、非常に驚いたと言います。これは、茂木氏が周囲の状況を映像として記憶している証左であり、その記憶力の高さは特筆すべき点です。

さらに、外交の舞台ではトランプ大統領から「タフ・ネゴシエーター(手ごわい交渉人)」と評されるなど、その交渉力は国際的にも認められています。これらの優れた能力と経験を、総裁選の期間中にいかに国民や党員にアピールできるかが、茂木氏にとって腕の見せ所となるでしょう。

結論

茂木敏充氏は、その卓越した実務能力と豊富な経験から、「ポスト石破」の有力候補の一人であることは間違いありません。しかし、知名度の低さや党員票獲得の課題は、彼が乗り越えるべき大きな壁です。早期の出馬表明は、自身の強みをアピールし、埋没を避けるための戦略と考えられます。今後の総裁選において、いかに自身の真価を国民と党員に伝え、支持を拡大していくのか、その動向が注目されます。

参照元

Yahoo!ニュース(テレビ朝日政治部)