10年間の失明状態にあったカナダ人女性が、「歯の移植手術」を応用した「歯根部利用人工角膜(OOKP)手術」により視力を回復したと報じられました。この医療の進歩は、難治性の角膜損傷に苦しむ人々に新たな光を当てる画期的なニュースとして世界中で注目を集めています。
カナダ人女性、10年間の失明から視力回復の奇跡
ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアに居住するゲール・レインさん(75)は、10年前に薬の副作用で角膜が損傷し、完全に失明していました。しかし、今年2月と5月にバンクーバーのマウント・セント・ジョセフ病院で2度の「歯根部利用人工角膜(OOKP)手術」を受けた結果、劇的に視力を回復。手術直後は光を感じる程度でしたが、時間が経過するにつれて色を識別し、物の形も認識できるようになったといいます。レインさんは「今では外出して美しい青い空や木々の緑を再び見られるようになりました。まさに奇跡のような出来事です」と喜びを語っています。彼女のこの「奇跡の回復」は、高度医療の可能性を改めて示すものです。
難関「歯根部利用人工角膜(OOKP)手術」とは
「トゥース・イン・アイ手術」とも呼ばれる「歯根部利用人工角膜(OOKP)手術」は、1960年代にイタリアで開発された非常に難易度の高い治療法です。通常の角膜手術では回復が見込めない末期患者に対する「最後の治療法」として確立されましたが、その複雑さゆえに世界でも実際にこの「難病治療」が行われたケースは少ないとされています。
視力回復手術、OOKPの仕組みを示すイラストレーション
手術は大きく2つの段階で進められます。まず、患者自身の犬歯と顎骨の一部を採取し、形を整えた後に人工角膜を挿入して「歯牙-光学複合体」を作製します。この複合体を患者の頬の内部に約3カ月間移植し、血管と結合組織の生長を促します。その後、損傷した角膜、虹彩、水晶体を除去した眼球に、この「歯牙-光学複合体」を移植するという、極めて繊細なプロセスです。
このOOKP手術を受けた患者の「視力維持率」は94%と高く、中には27年後も視力が維持されたという報告もあります。レインさんの手術を担当したグレッグ・モロニー博士は、「複雑かつ異例の手術ですが、本質的には角膜を入れ替える方法です。レインさんはこの手術を受けた患者の中では高齢ですが、期待以上の回復力を示しています」と、彼女の驚異的な回復力に言及しました。この「医療の進歩」は、多くの失明患者に新たな希望をもたらすでしょう。
結論
カナダ人女性ゲール・レインさんの「歯の移植」による「OOKP手術」での視力回復は、現代医学の限界を押し広げる画期的な事例です。この困難な手術が成功したことで、末期的な角膜損傷に苦しむ世界中の患者たちに、再び光を取り戻す希望が与えられました。
参考文献
- The Vancouver Sun 報道
- 朝鮮日報日本語版
- Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/500b1f4c070cd6c48e6e9052b50929b4e7a92c51)