資産3000万円あっても老後破綻の危機?妻頼りだった元エリート男性の「生活力ゼロ」が招いた悲劇

資産は十分にあるはずなのに、なぜ老後の生活は危機に瀕するのか? 神奈川県に住む加藤重男さん(仮名・77歳)は、大手企業勤務を経て定年後も働き続け、企業年金を含む年金収入は年間320万円、預貯金も3000万円と、経済的には恵まれた老後を送っていました。しかし、長年あらゆることを妻に任せきりだった彼を、突然の出来事が襲います。それは、まさに「老後破綻」の現実でした。

「老後資金」や「安心した暮らし」をイメージする貯金箱と家「老後資金」や「安心した暮らし」をイメージする貯金箱と家

加藤さんは神奈川県郊外の60坪の戸建てに、6歳年下の妻・秋子さんと二人で暮らしていました。料理、洗濯、掃除といった家事全般から、近所付き合いに至るまで、生活に関するあらゆることを秋子さんに任せきりでした。「ママは三食昼寝付きでお気楽だな」「専業主婦は楽でいいよな」といった言葉が口癖でしたが、これは彼なりの愛情表現だったのかもしれません。しかし、秋子さんにとっては心に響く皮肉でもあった可能性があります。加藤さんにとって、6歳も年下の妻が先に逝くことは、まったく想定外の出来事でした。3年前の春、秋子さんは享年68歳で心疾患により急逝。「まさか自分が残されるとは…」突然の別れは、加藤さんの日常を一変させました。

突然の妻の死、そして始まった「生活崩壊」

秋子さんの死後、加藤さんの生活はみるみるうちに立ち行かなくなりました。食事はコンビニや外食に頼るようになり、食費は月12万円に。節約方法が分からず、塩分過多で血圧も上昇しました。洗濯や掃除もままならず、週2回のクリーニングと月2回の家事代行を利用し、月5万円ほどの出費が増加。自慢の庭は手入れされずに雑草だらけになり、秋には落ち葉が近隣に飛散して苦情が出る事態に。

加藤さんを苦しめた「町内会当番」の現実

なかでも加藤さんを最も追い詰めたのは、13軒で持ち回りの町内会当番でした。ゴミ集積所の清掃やネット設置、ビン・缶ボックス設置、回覧板配布、週1回の夜間パトロールなど、内容は多岐にわたります。「妻がやっていた時は『大したことない』と思っていたのに、実際にやってみると本当にきつい。特に真夏や真冬のパトロールは体力的にも限界です。」近所の人々は当初こそ同情的でしたが、ゴミ当番を忘れて催促されるなど、気まずい思いをすることも増えました。「同じシニア世代の皆さんも頑張っているのに、自分だけ特別扱いはしてもらえない…」都内に住む娘に「町内会の当番がきつくて手伝ってほしい」と電話で助けを求めても、「お父さん、今まで何もしないでお母さんに頼りきっていたツケでしょ。私だって仕事があるし、自分でなんとかして」と突き放されました。「カネはある。でも、暮らしが崩れていく。どうしていいか分からないんです。」

加藤さんのケースは、いくら経済的に恵まれていても、生活を維持するための基本的な能力、すなわち「生活力」がなければ、老後が立ち行かなくなる現実を浮き彫りにしています。資産があっても「老後破綻」の危機に陥る可能性は、誰にでもあり得るのです。老後に向けた準備は、お金を貯めることだけではありません。自身の健康管理、家事、地域との関わりなど、生活全般を自分自身で担えるようにすることが、安心して歳を重ねるために不可欠です。

出典: Yahoo!ニュース / 幻冬舎ゴールドオンライン