夏の参院選は、事実上の「政権選択選挙」としての側面を持つ。政権与党が過半数を維持できるかどうかに注目が集まる中、政治ジャーナリストの角谷浩一氏と青山和弘氏が全国の選挙区情勢を分析した。本記事では、その第2回として、中部、近畿から中国地方と四国地方にかけての「当落予測」を詳報する。
北信越・近畿・中国・四国地方の参院選情勢分析
新潟選挙区
新潟選挙区の情勢について、角谷氏は立憲民主党の現職である打越さく良氏の「逃げ切り」を予測する。青山氏も同意し、新潟が米山隆一衆議院議員をはじめ立憲民主党が強い地域であることを指摘する。しかし、自民党の中村真衣氏が競泳の五輪メダリストであり、好感度が高いことから、逆転の可能性も残されているとの見方を示す。
京都選挙区
京都選挙区では、元衆議院議長の伊吹文明氏や共産党で10期務めた元国会対策委員長の穀田恵二氏といった大物が引退し、情勢が一変している。角谷氏は、このような状況下で、やはり自民党の西田昌司氏が強いと分析する。西田氏は今年5月に沖縄のひめゆりの塔を巡る不適切発言があり、謝罪・撤回に追い込まれたが、以前から舌禍癖があるとの見方がされているため、その影響は限定的だという。
京都選挙区から出馬予定の自民党・西田昌司氏
さらに角谷氏は、立憲民主党、日本維新の会、共産党が候補者を乱立させている状況が、西田氏にとって有利に働いていると指摘。最終的な2議席目は維新の新実彰平氏が抜け出す可能性が高いと見ている。共産党は穀田氏引退の影響で勢いが落ちた印象があるとのことだ。
大阪選挙区
大阪選挙区については、両氏とも大激戦になるとの見方で一致している。角谷氏は今回も維新が2議席を獲得すると予測。それに公明党が続き、最後の1議席を立憲民主党の橋口玲氏と自民党の柳本顕氏が争う構図となり、柳本氏に軍配が上がると予測する。
一方、青山氏は柳本氏と維新の岡崎太氏が競り合う展開になると見て、どちらも△評価としている。立憲民主党は大阪での人気が低く、国民民主党も当初擁立を検討した足立康史氏ではなく知名度のない候補となったため出遅れは否めないという。公明党は○評価だが、去年の衆議院選挙では大阪の4選挙区で全敗しており、意外と苦戦する可能性もあるとの見方を示した。
兵庫選挙区
兵庫選挙区も予測が最も難しい激戦区の一つだと角谷氏は語る。元明石市長の泉房穂氏は無所属ながら人気があり、当選は確実視されていると青山氏は述べる。
角谷氏は、泉氏が当選後に立憲民主党に入党する可能性が高いと予測。泉氏に続くのは維新の吉平敏孝氏とし、3位争いを自民党の加田裕之氏と公明党の高橋光男氏が繰り広げると見る。現時点では加田氏が優勢だという。国民民主党の新人候補である多田ひとみ氏は経済産業省出身の元官僚で、当初は地元浸透に苦労していたようだが、猛チャージをかけている状況だ。
和歌山選挙区
和歌山選挙区では、二階俊博元自民党幹事長の三男である伸康氏が出馬する。昨年の衆議院選挙では落選したが、角谷氏は伸康氏に○評価をつけている。二階氏が出馬すると決まった際、自民党本部内でも驚きの声があったことを明かしつつ、対抗馬が党勢の落ちている維新の候補であるため、二階氏で堅いと分析する。
これに対し青山氏は、立憲民主党と維新が候補者調整に成功し一本化したことで、維新の浦平美博氏が逆転する可能性もあると見ている。立憲民主党和歌山県連は候補擁立取りやめについて「和歌山でリベラルな考えを持つ方の投票先はほぼなくなった」と党本部への不満を漏らしているが、リベラル層の中にも「自民党でなければよい」と考える層が一定数おり、その票が維新に流れる可能性があるとのことだ。
※「第3回」に続く