「バラマキ病」日本の政治、参院選現金給付に専門家が警鐘

7月3日公示の参院選に向け、物価高対策が最大の争点となっています。中でも注目されるのが、国民への現金給付策です。これに対し、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、給付の経済効果、特に消費刺激への影響は「非常に小さいだろう」と断言し、日本の政治体質に警鐘を鳴らしています。

第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト。参院選の物価高対策としての現金給付について経済分析を語る。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト。参院選の物価高対策としての現金給付について経済分析を語る。

選挙対策としての現金給付:専門家が指摘する政治の「病」

熊野氏の見解では、石破茂氏のような財政再建論者であっても、選挙前の危機感や与党内の減税論に押され、本意ではない現金給付策を受け入れてしまう現状を指摘しています。このことは、本来「NO」と言うべきバラマキ政策を止められない、日本の政治体制そのものが抱える「重い病」であると分析しています。

自民党の給付策と試算:約3.1兆円の負担

自民党が参院選公約として掲げる現金給付は、国民1人当たり2万円を支給し、さらに子どもと住民税非課税世帯の大人に1人2万円を加算する内容です。熊野氏が今年5月1日時点の人口データに基づき試算したところ、総額は約3兆845億円、すなわち約3.1兆円に上ると見込まれています。

消費刺激効果への疑問:過去のデータと限界消費性向

この巨額な給付金が、実際にどれだけ消費支出を押し上げるかが経済効果の鍵となります。内閣府が2020年の特別定額給付金について家計簿アプリデータから分析した結果、消費増加効果は給付額の約22%にとどまりました。熊野氏はこの「限界消費性向」を今回の給付に当てはめ、名目消費支出の押し上げは約6800億円、名目GDP比でわずか0.1%ポイントに相当すると推計しています。

結論として、今回の参院選で焦点となる現金給付策は、約3.1兆円の財政負担を伴うにもかかわらず、過去のデータからも消費刺激効果は限定的と見られています。熊野氏の分析は、単なる政策評価にとどまらず、選挙という事情に左右され、効果の乏しいバラマキ政策を繰り返してしまう日本政治の構造的な課題を浮き彫りにしています。

参考資料:Yahoo!ニュース / dot.(AERA dot.編集部)掲載記事 https://news.yahoo.co.jp/articles/c6f3f5b988ca8db146c67d2dc00ba0cffcdd58d2