ストーカー被害には誰につきまとわれているかわからないケースがある。今回紹介する被害女性は、2年間「何者か」に行動を監視され、事実無根の怪文書を知人に送付されるなどの嫌がらせを受けた。警察が逮捕したことで初めて知った犯人は、想定していた犯人像とはあまりにかけ離れた男だった。(前後編の前編)
【写真10枚】“正義感”から被害女性の知人男性宅に送ったと主張「前新潟市議のキモすぎる怪文書」
***
突然、友人宅に届いた「怪文書」
「刑事さんにXの名前を出された時は、思わず『違います』と言い返しました。『なに言っているんですか、そのおじちゃんは全然関係ない人ですよ』って。けれど、刑事さんは真顔で『Xで間違いありません』と言うんです」
こう振り返るのは、新潟県新潟市で美容関係の店を経営するA子さん(40代)である。A子さんは2020年12月から何者かの影に怯えて暮らすようになった。
きっかけは知人であるBさんの妻宛に送られた匿名の怪文書だった。A子さんは独身で一人暮らし。妻帯者のBさんとは仕事の関係でたまに食事に行くだけの友人関係だったが、怪文書には“不倫相手”としてA子さんの氏名、住所が記載されていた。A子さんがBさんと2人で食事に行き、自宅アパートまで車で送り届けてもらう様子を写した写真も「不倫の証拠」として同封されていた。
「Bさんの奥様は私たちの仲を疑ってしまい、Bさんとは仕事が継続できなくなってしまいました。それ以上に困ったのは、知らない人に自宅を知られつけられていたことです。怖くなり、20キロ離れた実家に引っ越さなければならなくなりました」
知らぬ間に車に取り付けられていたGPS
だが、その後も見知らぬ者の尾行は続いた。5カ月後にBさんの妻宛てに届いた2通目の怪文書には、A子さんが車でホテルに入っていく写真も入っていた。〈いまだ進行中〉〈余計なお世話ですが、今後ご主人に直接連絡を絶対にとらせてはいけません〉〈相手は手強いと思ってください。場合によっては弁護士へ〉というメッセージも。ただ、ホテルの写真にはBさんは写っていなかった。
「当然です。なぜなら、Bさんではなく、本当の恋人と一緒に過ごしていた時の写真だったからです。犯人はあえて私が不倫をしているように見せかけてBさんの奥さんを不安に陥れたのです」
しばらくすると、監視の手口がわかった。A子さんの自家用車の車体裏にGPSが取り付けられていたのだ。A子さんはすでに新潟県警に相談していたが、この段階でBさんとともに被害届を提出した。
「警察はおそらく探偵業者がつけたのだろうと話していました。実家の母はいよいよ精神が不安定になってしまい、これ以上家族を巻き込めないと、再び一人住まいのアパートを探して転居することになりました」






