平井卓也氏、映画「香川1区」巡る表現で監督らを提訴 名誉毀損と業務妨害主張

自民党の平井卓也衆院議員(67)は7月1日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、2022年1月に公開されたドキュメンタリー映画「香川1区」の監督である大島新氏および映画製作会社ネツゲン、高松市の瀬戸内海放送に対し、名誉毀損および業務妨害を理由に提訴したことを明らかにしました。この提訴は、映画およびそれを基にした報道における特定の表現行為が、平井氏の政治活動や名誉に深刻な影響を与えたとするものです。

平井卓也衆院議員、映画「香川1区」提訴を表明平井卓也衆院議員、映画「香川1区」提訴を表明

映画「香川1区」を巡る経緯と提訴に至る背景

平井氏は自身の公式サイトでも声明を発表し、提訴に至る詳細な経緯を説明しました。問題の発端は、映画「香川1区」の一場面と、それを根拠にした報道でした。この内容に基づき、2022年11月14日に平井氏に関する告発がなされました。

その後の捜査を経て、高松地方検察庁は2023年10月6日に不起訴処分としました。しかし、2024年7月10日には高松検察審査会がこの不起訴処分を不当とする議決を下しました。これを受け、高松地検は約半年間の再捜査を実施しましたが、2025年1月17日に再び不起訴処分が決定しました。

争点となった政治資金パーティーと映画の描写

今回の提訴における主な論点は、平井氏が2020年に開催した政治資金パーティーに関するものです。映画では、パーティーの案内状の他に、「出席者を限定する内容の依頼文書(パーティー券10枚購入で3人に出席人数を限定)」が作成・送付され、出席者が限定されたこと、そして出席しなかった人数分のパーティー券収入が、パーティー券の名を借りた寄付にあたるのではないかという疑惑が提示されました。

特に、映画ではこの件に「政治の闇」という表題が付され、あたかも平井氏が違法行為を行っているかのような表現がなされたと平井氏は主張しています。また、瀬戸内海放送は昨年の衆議院選挙前の8月28日、ニュース番組内で異例の時間を割いて同様の内容を報道したとされています。

平井氏の反論と映画・報道への批判

平井氏は声明文の中で、映画や報道で示された出席者を限定する文書は自身の事務所が作成したものではなく、県内の会社がメモとして作成し、社員の勘違いによって生じた事態であると強く反論しています。

しかし、「作成していないこと」を証明することは極めて困難であり、「悪魔の証明」を求められる状況の中で、日頃の政治活動や選挙戦を通じてこの誤解を完全に払拭するには至らなかったと述べています。平井氏は、簡単な裏付け取材を行えば直ちに明らかになる事実であるにもかかわらず、あたかも疑惑があるかのように「捏造された悪意のある映画及び報道」であったと断じ、これを断じて容認できないとしています。

提訴の理由と今後の対応

平井氏は、2021年12月の映画公開以来、多くの有権者や支援者に心配と迷惑をかけたことを謝罪しました。その上で、根拠のない疑念により自身の人格と名誉が著しく傷つけられ、選挙活動にも深刻な影響があったことを訴えました。

「民主主義の根幹を揺るがすこのような映画や報道が、今後二度と繰り返されることのないよう強く願い」、今回、提訴という決断に至ったとしています。今後については、「事実を明らかにするとともに、誠実に説明責任を果たし、信頼回復に努めてまいる」と述べ、引き続きの指導・支援を求めて締めくくりました。

大島新監督の反応

一方、提訴された映画監督の大島新氏は、自身のXで反応を示しました。大島氏は、「本日自民党の平井卓也議員から訴えられました。映画『香川1区』での表現に対する名誉毀損です」と投稿。訴状がまだ届いていないため詳細は把握できていないとしつつも、「3年以上も前に公開した映画に今訴えを起こすことは、理解に苦しみます」との見解を示しました。

そして、「表現の自由を守るために、訴訟を通じて適切に対応するつもりです」と表明し、法廷で争う姿勢を示しています。

本件は、一政治家がドキュメンタリー映画およびメディアの報道内容に対し、表現行為を巡って法的措置に訴えるという、政治と表現の自由に関わる重要な事例として注目されます。