静岡県伊東市の田久保真紀市長は7月2日、自身の学歴に関する疑惑について会見を開き、市民への謝罪とともに経緯を説明した。この問題は、匿名文書によって田久保氏の学歴が「大学を卒業しておらず、中退どころか除籍である」と指摘されたことに端を発する。田久保市長は、事実確認のため自ら大学に出向いて申請した結果、卒業は確認されず、除籍であったことが判明したと述べた。一方で、選挙期間中に自ら「大学を卒業している」と公表した事実はなく、弁護士に確認した結果、公職選挙法上の問題はないとの見解を示した。
「卒業証書と見られるもの」を巡る応酬
会見の最大の焦点は、田久保市長が過去に市議会などで提示したとされる「卒業証書と見られるもの」だった。記者はその書類が何であったのか、偽造の可能性も含めて市民の信頼に関わる問題として説明を求めた。
田久保市長はこれに対し、現状では事実として担保できる証明書が手元にないとした上で、自身の立場よりも、市民が投じた一票が公職選挙法上問題ないことを伝えることが先だと述べた。本来であれば全ての書類が揃ってから説明すべきだが、問題が大きくなり市民の懸念が高まっているため、まずは選挙中の経歴に問題がないことを知らせたいとの意向を示した。
記者は、議長や秘書課に提示され、一部記者も目にしたとされるその書類は、市や議会、記者団の間では「卒業証書として示された」という認識であると指摘。「書類が整っているか以前に、卒業証書として渡したもの、見せたものは何だったのか」と具体的に問い詰めた。
伊東市の田久保真紀市長が会見で説明する様子
田久保市長は、提示した当時は「卒業を証明するものであろうと思ったので他の人にもお見せしたが、残念ながら卒業を証明するものとしては機能しなくなってしまったというか、実際には卒業していないということだ」と釈明。一度卒業扱いになったものがなぜ除籍になったのかについては、事実関係の確認中であり、現状手元にある材料だけでは説明できないと繰り返した。
記者は説明に納得せず、「議長とかに見せた書類は何だったのか？ 卒業したかのように勘違いさせるようなものを提出していたとすると、信頼関係がやはり失われるのではないか？」と追及。市長は「私の方に確認できる範囲でしっかり確認しなければならないと思っている。今調べている最中で」と答えた。
さらに記者が「ご自身が提示したわけですよね？ ご自身が提示しているとしたら、きちっと今説明できる話ですよね」とたたみかけると、市長は「提示をしていることを言っているのではなく、私としては、これで自分の経歴が分かっていただけるかなという意味でお見せした」と回答。
記者は「つまり経歴が違ったわけですよね。卒業したかのように勘違いさせるような書類とは何を提示したのか。それは、卒業証書でなかったら、自分で作った、例えば、紙なのか、そこはもう信頼関係として、じゃあ“あれ”は何だったんですかと思うのは当然だ。それをなぜきちんと説明できないのかは疑問だ」と、書類の具体的な内容について再度問い質した。
田久保市長は、「私の方で、議長、副議長がいて提示したのが確か6月の初頭だったと思うが、その時はそれで私の経歴がきちんと証明できる証明書として機能する卒業の証書であると認識はしていたが、土曜日に大学に行って確認したところ、示されたものが除籍という事実だった。どうしてこういう経緯になっているのは今確認中というところまでしか、今持っている材料ではお話ができないというのが現状だ」と述べた。
学歴疑惑に関する会見で弁護士と共に説明を行う田久保伊東市長
記者はさらに「さっきから同じことを言っているが、そこには東洋大学卒業と書いてないものをさも卒業したかのように見せたということか？」と確認したが、田久保市長は「私の中では全くそういった認識はございません」と否定した。
別の記者が加わり、「そこはすごく重要で、田久保市長の手元にあるのは卒業証書だと田久保市長が思っているものが手元にあるわけだ。『それを議長たちに見せました』と。なぜ除籍なのにそれを持っているのかを聞いている」と改めて質問。
田久保市長は弁護士と相談の上、「要するに、除籍という事実しか今確認が取れておらず、一体どのような理由、例えばいつということが全然情報にないので、そこを確認しないと、私の方からあまり推測でものを申し上げるのは、今の状況では余計混乱を招いてはいけないと思う。本日のところは、きちんと得ている情報で説明できるのはそこまで」と、現時点での説明には限界があるとの姿勢を示した。
会見では、「この大学を出たという学歴とかで皆さん票を取りたいとか、そういった意識が全くなかった」と語り、涙ぐむ場面も見られた。
今後の経歴については、「お恥ずかしいが、もう除籍であるとここでしっかりと認めて皆様に示すことで、除籍でありましたということになると思う」と述べ、除籍の事実を認めた。一方で、今後の進退については明言を避け、「調査を行っており検討中」とした。
結論
伊東市の田久保真紀市長は学歴詐称疑惑に関する会見で、自身が東洋大学を卒業ではなく除籍であった事実を認めた。選挙活動における公職選挙法上の問題はないとの認識を示したが、過去に議会等で提示した書類が「卒業証書と見られるもの」であったにもかかわらず、その書類が具体的に何であり、なぜ除籍であるにもかかわらずそれを所持していたのかについて明確な説明を避けたことで、記者からの厳しい追及を受けた。市長は現在、除籍に至った経緯などの事実確認を進めているとして、今後の詳細な説明を待つ状況となっている。市民との信頼関係維持の観点から、提示書類の真相解明と一連の経緯に関するさらなる説明責任が求められている。
