長寿番組として親しまれてきた読売テレビ制作・日本テレビ系のバラエティ番組『ダウンタウンDX』が、2024年6月26日に31年8ヵ月の歴史に幕を下ろしました。最終回では、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏(61)はもちろん、「回復した」とされる浜田雅功氏(62)も出演せず、その異例のエンディングが波紋を呼んでいます。番組冒頭にダウンタウンの影が映し出されたことで、SNSでは松本氏の登場を期待する声もありましたが、結果はどちらの姿も映らないままの終了でした。この唐突とも言える幕引きの背景には、何があったのでしょうか。
松本人志氏の活動休止と番組への影響
事の発端は、2023年末に「週刊文春」が報じた女性トラブル疑惑でした。これにより、松本氏は瞬く間にテレビ番組から姿を消すことになります。出演番組からはCMスポンサーが相次いで撤退し、松本氏自身も文春側との裁判に注力するため、芸能活動の休止を選択しました。
『ダウンタウンDX』についても、松本氏は2024年1月から出演を見合わせていました。そこから約1年5ヵ月を経て、番組は打ち切りという形で終了を迎えることになったのです。
読売テレビとの確執が番組終了の一因か
読売テレビ関係者は、今回の長寿番組終了の背景には、同局と松本氏の間の「確執が大きい」と明かしています。確執のきっかけの一つとされているのが、2024年7月に読売テレビが制作・放送した情報番組『ミヤネ屋』での報道です。
ミヤネ屋では、松本氏の女性トラブルを巡り、被害を訴える「A子さん」に対し、松本氏側関係者が証人として出廷させないよう「交渉を依頼した」という内容を再現VTRで報じました。スタジオのコメンテーターがその内容を「事実前提」でコメントしたことに対し、松本氏の弁護士は「偏向報道だ」と強く反論する声明を出しました。松本氏自身も自身のX(旧Twitter)アカウントでその声明文を投稿し、“無言の抗議”を行ったとされています。
この一連の報道と松本氏側の反応に対し、読売テレビ内部の松本氏を支持する局員の間には動揺が広がり、異動希望の時期には「ミヤネ屋だけは絶対に行きたくない」と訴える者までいたといいます。これは、ミヤネ屋への異動が松本氏から「敵」と見なされる可能性を恐れてのことでした。
読売テレビの番組で写真すら使われなかった松本人志氏と浜田雅功氏のシルエット
局側トップの発言に見るスタンス
読売テレビは松本氏側からの抗議に対し、新社長に就任した松田陽三氏が就任後初の会見で言及しました。松田社長はミヤネ屋の報道について、「抗議文書の中身を拝見すると、事実関係で誤解があると思う。訂正する必要はないと判断した」と述べ、松本氏側を牽制する姿勢を見せました。
さらに、2024年3月にも松田社長は、「視聴者に受け入れていただけるかが我々の判断基準。松本さんがお話をされることをお聞きして考えたい」と発言。これは、松本氏が自身の口で一連の騒動について説明する「会見」などがない限り、テレビへの復帰を認めないという考えを暗に示唆するものと受け止められています。
前社長の大橋善光会長も松田社長と同様の考えであり、女性トラブルの問題を抱える松本氏を番組に出演させることは難しいという判断があったと読売テレビ関係者は話します。しかし、一方で、ミヤネ屋の件などを通じて、松本氏側や所属事務所である吉本興業側も読売テレビに対し強い不信感や怒りを抱いていると言われています。これが、最終回に「病気から復帰して元気な」はずの浜田氏すら出演しなかった理由であり、おそらくそこには松本氏の意向が強く働いていると推測されています。
最終回の異例な内容と現場の無念
結果として、『ダウンタウンDX』の31年間の集大成となるはずだった最終回は、異例の内容となりました。過去の名場面の振り返りや、出演者によるスタジオでのトークはほとんどなく、ゲストが車中で思い出を語るという形式が中心でした。
この背景には、吉本興業側がダウンタウンの「映像はおろか、写真1枚すら」読売テレビに対して使用許可を出さなかったという事実があったといいます。つまり、吉本側が読売テレビに対し「NGを突き付けた」状態だったのです。そのため、番組スタッフは回想シーンでダウンタウン本人たちの映像を使えず、イラストを使用するしかありませんでした。
番組スタッフは長年ダウンタウンと共に番組を作り上げてきたため、深い愛情を持っています。最終回くらいは過去の名シーン映像をふんだんに使用して、華々しく締めくくりたかったであろうことを考えると、彼らの「忸怩たる思い」は計り知れません。
読売テレビ関係者によると、現時点で松本氏側と読売テレビの関係は「最悪な状態」であり、「絶縁」したに等しい状況とのことです。しかし、読売テレビ上層部は、そもそも松本氏自身が今後テレビに復帰できるかどうかも不透明であることから、この状況を「痛い」とは感じていないという見方もあるようです。
本サイトが読売テレビに対し、ダウンタウン側から映像・写真の使用許可が下りなかったかについて質問したところ、「制作過程についてはお答えしておりません」との回答でした。
ファンのみならず、番組スタッフにとっても、何とも後味が悪い最後となってしまった『ダウンタウンDX』。長寿番組の幕引きは、単なる番組編成上の都合ではなく、出演者を巡る深い対立が背景にあったことを示唆しています。
FRIDAYデジタル