映画やドラマ、さらにはインフルエンサー界隈でも無視できない存在となっているのが、「2世タレント」だ。かつては「親の七光り」と揶揄されることもあったが、現在ではキャスティング会議の場で彼らの名前が挙がるのは当たり前になっているという。では、その実力や素顔はどのようなものなのだろうか。「現場」で得られた関係者たちのリアルな評判を調査した。
現場からの声:個々のケース
芸能界の第一線で活躍する2世タレントたちについて、現場のスタッフはどのように見ているのか。具体的な名前を挙げながら、彼らの素顔や仕事への向き合い方が語られている。
杉咲花:不器用さが生む信頼
2024年に主演したドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』や『海に眠るダイヤモンド』での演技が高く評価され、ギャラクシー賞個人賞を受賞した俳優・杉咲花。彼女は元レベッカのギタリスト木暮武彦と歌手チエ・カジウラを両親に持つ2世タレントだ。
「杉咲さんのご両親は音楽家で役者ではないので、親に頼らず独自の道を切り拓いてきた方と言えます。いい意味で不器用な方で、時には『困ったさん』な一面も。ディレクターから演技のダメ出しがあっても、『役として考えるとそれはできない』と納得するまでやり直さないこともあり、撮影がストップしてしまうこともあるんです。現場スタッフからすれば、正直『あちゃ〜』という状況ですね」(ドラマ制作スタッフ)
しかし、それでも彼女には「杉咲組」と呼ばれる熱心な支持者がいるという。「作品への強い思い入れを持つスタッフから見れば、撮影が止まることさえも、作品に対してなんて誠実な人なんだろうと映るんです。だからこそ、次にまた一緒に仕事をしたいというオファーが絶えないのでしょう」(同前)
ドラマ『アンメット』などで評価された俳優・杉咲花
趣里:明るさと秘めた感情
NHK朝ドラ『ブギウギ』でヒロインを務め、注目を集めた趣里。彼女の両親は、言わずと知れた大物俳優・水谷豊と伊藤蘭だ。趣里自身はバレリーナの夢を怪我で断念し、アルバイトをしながら演技を学んだ苦労人でもある。現場では常に明るく、周囲を笑顔にしているという。
「趣里さんは、自分らしさを前面に押し出す主演女優にありがちな強気なタイプではなく、チームワークを大切にし、監督の演出意図を熱心に聞き入れるタイプです。ただ、言いたいことを我慢していることも多いようで、後になってから『実はあの時…』と打ち上げの場で言い出し、スタッフと言い争いになったこともあったと聞きます」(テレビ局関係者)
石橋静河:自然体演技の秘訣
2026年度後期のNHK朝ドラ『ブラッサム』の主演にオーディションで選ばれた石橋静河は、父が石橋凌、母が原田美枝子という俳優一家に生まれた。そんな石橋だが、現場の待機場所(前室)では同世代の共演者と学校の休み時間のように賑やかに過ごしている姿が見られるという。
「一見、集中していないように見えて、手を抜いていると感じる人もいるかもしれませんが、そうではないんです。これは映画『人数の町』などで共演した中村倫也さんから学んだ方法だそうです。中村さんは前室で自然におしゃべりしていて、そのままのテンションで本番に臨み、台詞を話すのが魅力的だったと。石橋さんもいい意味で公私の区別がなく、それが彼女の自然体な演技に繋がっているようです」(同前)
希空:インフルエンサーから役者へ
2024年に本格デビューし、SNS総フォロワー数200万人を超えるインフルエンサーの希空(のあ)。彼女は辻希美・杉浦太陽夫妻の長女で、恋愛リアリティ番組『今日、好きになりました。卒業編2025 in ソウル』出演でも話題となった。
「希空さんには、女優になりたいという思いがあるようです。そのため、ご両親の辻さん・杉浦さんは、演技の勉強のためにワークショップに通わせるべきかなど、悩んでいると聞いています。ただ、現場での立ち居振る舞いについては、ご両親がきちんと教えているようで、評判が悪いという話は聞こえてきません」(別のテレビ局関係者)
Koki,:強すぎる光と壁
独自の路線で成功を収める2世タレントがいる一方、両親の強すぎる存在感に苦労しているケースもある。木村拓哉・工藤静香夫妻の次女・Koki,がその典型だという。2025年3月、5月に前後編で公開された主演映画『女神降臨』は全国300館以上で公開されたが、前編の興行収入は約8000万円と振るわなかった。
別の映画関係者は語る。「木村さんと工藤さんの娘さんというだけで起用したいという気持ちはありますが、ご両親から何か言われたら困るため、揉めないようにと色々と気を遣うのが大変です。現場でのKoki,さんは、スタッフ含め同世代とはうまくコミュニケーションが取れているようですが、まだ若さゆえか、日本特有の『あうん』の呼吸が分からないようで、年長者との意思疎通が円滑にいかないのがネックですね」
主演映画の不振もあり、厳しい状況に置かれているのが現状だ。
窪塚愛流:現場の人気者、でも…
男性の2世タレントでは、2024年からフレッシュな顔ぶれが台頭している。その筆頭が、俳優・窪塚洋介の長男・窪塚愛流(あいる)だ。1月クール放送のドラマ『御上先生』で生徒役を好演し、注目を集めた。
「6月16日から始まったNHK夜ドラ『あおぞらビール』ではいきなり主役ですからね。最初は窪塚洋介さんの息子という認識でしたが、彼は只者ではありませんよ。でも、お父さんのような近寄りがたいオーラは全くなく、撮影スタジオではみんなの愛されキャラなんです。現場も明るくなるし、雰囲気作りという点では座長として完璧。挨拶も元気で、いつも楽しそうです。以前、『いつも楽しそうでいいね』と声をかけたら、お父さんの窪塚洋介さんが毎朝『今日も楽しんで』と送り出していたそうで、外に出たからには毎日楽しまないと損だと考えるようになったそうです」(ドラマ関係者)
愛流の現場での評判は非常に良いが、苦言を呈す関係者もいる。「まだ若いこともありますが…友達と朝まで飲み明かしているようです。次の日の朝に仕事があるのに全く起きられず、マネージャーの鬼電でやっと起きる始末。それでも愛流くんは飄々としていて、そこはお父さん似だと感じます」(別のテレビ局関係者)
櫻井海音:プロ意識の高い優等生
窪塚愛流と同じく『御上先生』に出演していた櫻井海音(かいと)は、プロ意識が高く優等生タイプだと評判だ。彼の父親は国民的人気バンド、ミスターチルドレンの桜井和寿だが、現場では「父がミスチルの桜井だということを鼻にかけるようなところは全くない」(ドラマ関係者)という。
「プロ意識が非常に高く、事前に台詞が頭に入っているのはもちろん、現場が好きで、すぐに撮影に入れるよう常に準備万端です。スタッフにも分け隔てなく接するため、彼の悪口を言う人は周りにはいません」(別のドラマ関係者)
野村康太:期待の新星
新人タレントがテレビ局や制作会社に挨拶回りをすることを通称「顔見せ」というが、そこで「この子は売れる」と評判だったのが、俳優・沢村一樹の次男・野村康太(21)だ。
「事務所が大手の研音で、ビジュアルの良さもある上に、現場での態度など努力している様子がうかがえます」(ドラマ制作関係者)という評判通り、7月9日スタートのドラマ『大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜』にレギュラー出演が決まっている。
仲野太賀:個性派と義理堅さ
2026年1月スタートのNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に主演することが決定しているのが、俳優・中野英雄の次男・仲野太賀だ。5月には是枝裕和監督が全編iPhoneで撮影した短編映画『ラストシーン』で、「おっとりしているけれど、演技の実力は確か」(テレビ局関係者)と評判の哀川翔の次女・福地桃子と共演し、話題となった。
「太賀さんは、最初はとっつきにくいことで知られています。というのも、6年前に改名して売れっ子になった頃から、自分で『大物感』を半端なく醸し出しているんです。例えば、椅子に勢いよく音を立てて座ったり、誰もいない時はテーブルの上に足を投げ出したりすることもあります。俺に話しかけるな、というオーラが全開です。芝居に関係ないところは気にしない、というタイプですね。その一方で、売れない頃にお世話になったスタッフや共演者仲間には非常に義理堅いです。どんなに小さな劇場の芝居でも、フットワーク軽くマネージャーをつけずに観に行ったりしますからね」(映画関係者)
多士済々の2世タレントたちだが、現場での姿はそれぞれ異なる個性や「不器用さ」が垣間見えるようだ。
出典:週刊FLASH 2025年7月15日号 / Yahoo!ニュース