欧州を襲う記録的熱波 スペインで死者続出、原発停止、砂漠化の懸念も

気象庁は先日、東海地方の梅雨明けを発表しました。平年より大幅に早い梅雨明けは、今年の夏の猛暑を予感させます。一方、遠く離れたヨーロッパでも、記録的な熱波が猛威を振るっており、特にスペインでは深刻な影響が出ています。死者の増加、山火事の多発、そして経済への打撃が報告されています。

欧州各地で猛威を振るう熱波とその影響

スペインではすでに多数の死者(推計390人)が出ています。各地で山火事が発生し、鎮火が困難な状況です。さらに、河川の水温上昇により冷却水が確保できなくなり、一部の原発停止といった事態も発生しています。これは、欧州全体で電力供給や安全保障にも影響を及ぼす可能性があります。

スペインなど欧州各地を襲う記録的な熱波による影響を示す画像スペインなど欧州各地を襲う記録的な熱波による影響を示す画像

熱波の原因:異常な地中海の海水温

この記録的な熱波の主な原因の一つとして、地中海の異常な海水温が挙げられています。カタルーニャ海洋科学研究所の研究員は、「地中海では異常気象が確認でき、水面温度が平年より6度近く高い地点もある」と指摘しています。この高い海水温が大気の温度を押し上げ、熱波をさらに増幅させていると考えられます。

スペイン南部の過酷な暑さ:40℃超えが常態化

連日40度超えが続くスペイン南部、アンダルシア地方の状況は特に深刻です。日中の猛暑を避けるため、闘牛が夜に行われるほどです。しかし、夜の午後11時でも33.5度を示す場所もあり、その過酷さが伺えます。地元の人々は、厳しい暑さの中でも闘牛観戦に際して身なりを整えるなど、伝統を重んじる姿勢を見せています。

経済への打撃:成長鈍化の懸念

長期化する熱波は、経済活動にも大きな影響を与えています。ドイツの金融会社アリアンツ・リサーチの報告書によると、猛暑によって2025年の欧州経済成長は推計で0.5ポイント鈍化する見込みです。報告書は「気温が32度を超えると、1日の経済的損失は“ストライキ半日分”に相当する」と分析しており、その深刻な影響を示唆しています。

スペイン特産品への影響:オリーブ栽培の危機

スペインの主要な特産品であるオリーブも、熱波と乾燥の影響を強く受けています。コルドバ近郊では、道路脇の雑草が完全に枯れ、地表がむき出しになっています。オリーブ栽培においては、土壌の湿気を保つ雑草が不可欠であり、これが枯れることは深刻な問題です。雑草が「覆い」となって土壌の乾燥を防ぎ、暑さが根に伝わるのを和らげる役割を果たしているからです。枯れた枝や葉、変色したオリーブの実も確認されており、収穫への懸念が高まっています。

長期的な懸念:国土の砂漠化

このような状況の先に危惧されているのが、国土の砂漠化です。スペインでは、すでに国土の約75%が乾燥地帯または半乾燥地帯とされています。今回の熱波とそれに伴う乾燥は、この砂漠化をさらに進行させる可能性があります。これは農業だけでなく、生態系全体に深刻な影響を及ぼします。

生産者の声:気候変動への対応が不可欠

オリーブオイル生産会社のマルフェイトさんは、「気候変動オリーブに影響を与え、生産量が安定しなくなっている」と語っています。「気候変動に対処できなければ、生産量は減ることになるだろう」と、危機感を表明しています。現在のところ、オリーブオイルの価格などに大きな影響は出ていませんが、将来的な供給への懸念が高まっています。

まとめ:熱波が示す気候変動の現実

欧州、特にスペインを襲っている記録的な熱波は、単なる一時的な異常気象ではなく、気候変動がもたらす現実的な脅威であることを示しています。死者、経済損失、そして国土の砂漠化といった多岐にわたる影響は、地球温暖化の進行がいかに深刻な結果を招くかを浮き彫りにしています。今後、こうした極端な気象現象への対策と、長期的な気候変動への適応が、世界各国にとって喫緊の課題となるでしょう。

参考資料

テレビ朝日