様々な名優たちが躍動し、視聴者を魅了した2025年の春ドラマシーズン。多岐にわたるジャンルの作品が放送される中、特にその演技で光彩を放った俳優たちに注目が集まりました。ここでは、筆者の独断に基づき、この春特に印象的な演技を見せた俳優ベスト5(候補)を挙げ、彼らがどのように作品を彩ったのかを掘り下げていきます。これは、シーズンを締めくくり、最も優れた活躍を見せたMVP俳優を決定するための重要なステップとなるでしょう。春ドラマにおける俳優たちの熱演は、多くの話題と感動を生み出し、日本のテレビドラマの層の厚さを示す形となりました。
2025年春ドラマで主演を務めた俳優たち:左から阿部寛(『キャスター』)、内野聖陽(『PJ ~航空救難団~』)、中井貴一(『続・続・最後から二番目の恋』)
第5位 阿部寛:『キャスター』(TBS系)主演
『キャスター』は初回世帯視聴率が14%台を記録し、大きな注目を集めました。これは、過去のヒット作『VIVANT』や『ドラゴン桜』、『下町ロケット』といった“阿部寛主演の日曜劇場”に対する視聴者の根強い信頼と大きな期待の表れと言えるでしょう。報道現場の設定やストーリー展開には一部で無理があるとの指摘もありましたが、最終的に全話平均世帯視聴率は今期唯一の2桁を達成しました。阿部寛の圧倒的な存在感と、時に「顔面相撲」とも評される迫真の演技は、多くの視聴者を最終話まで引きつけました。彼が主演でなければ途中で離脱したであろう視聴者もいたはずで、阿部寛の「画力」の健在ぶりと、作品を最後まで見せる力は今期も際立っていました。
第4位 中井貴一:『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)主演
2012年から続く人気シリーズの最新作で、小泉今日子とW主演を務めた中井貴一。長年培われた小泉今日子や他の共演者たちとの軽妙で自然な掛け合いは、視聴者にとって心地よい時間を提供しました。物語に特段大きな出来事が起きなくとも、彼らのやり取りそのものが作品の魅力となり、高い視聴者満足度につながりました。昨年出演したゲーム『龍が如く8』で見せた、極道の世界で暗躍する男の凄みある演技とは対照的に、今作で見せたお人好しで少し気弱な“和平さん”としての別人ぶりは、まさに名優のなせる業と言えるでしょう。さらに、小泉今日子と共にエンディング曲『ダンスに間に合う』を歌唱し、その美声を披露したことも特筆すべき点です。
第3位 本田響矢:『波うららかに、めおと日和』(フジ系)出演
主演の芳根京子と共に、初々しい新婚夫婦の繊細な“恋愛模様”をじっくりと丁寧に描いた今作で、本田響矢は数々の心温まる「うぶキュン」名シーンを生み出しました。女性の扱いに慣れておらず、不器用ながらも、妻への一途な想いを誠実に表現する“瀧昌様”役を見事に演じきりました。彼の口癖である「問題ありません」は視聴者の間でプチ流行語となり、多くの共感を呼びました。今作を通して、本田響矢は令和における正統派イケメンスターとしての存在感を確立し、その爽やかさと演技力で視聴者の心を掴みました。
第2位 高橋光臣:『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京系)出演
今期のドラマで、キャラクターとして最も強烈なインパクトを放っていたのは、親友3人組それぞれの「サイテー夫」の一人、加賀美弘毅を演じた高橋光臣ではないでしょうか。異常なまでの束縛癖を持つ夫を、見る者に「気持ち悪い」と感じさせるほど振り切って演じきり、その常軌を逸した言動は「弘毅劇場」として多くの視聴者に愛されました。彼の暴走ぶりは、『スーパー戦隊シリーズ』出身のイケメン俳優であることを忘れさせるほどでした。
その一方で、束縛の根源にある自身の引け目から涙ながらに妻からの別れを受け入れる弱さや、別の男性の子を身籠った妻をそれでも深く愛し抜こうとする漢気ある弘毅の姿も、高橋光臣は非常に繊細に演じ分けました。これほどまでに奇妙で常軌を逸したキャラクターが、妻との関係修復を掴み取るという大逆転劇には心を打たれるものがありましたが、最後に視聴者に「やっぱりこの男はヤバいのではないか?」と思わせる余韻を残した点も見事でした。その後の弘毅がどうなったのか、見てみたいと思わせる演技でした。