大阪・千日前のランドマークであった複合商業ビル「味園ユニバースビル」が、2025年7月5日をもって全ての営業を終了し、約70年に及ぶその長い歴史に終止符を打ちました。高度経済成長期が始まった1956年に開業したこのビルは、時代と共に姿を変え、大阪・ミナミの独特な文化を支え続けてきました。
営業終了後の大阪・味園ユニバースビル内部、静かに歴史を閉じた象徴
開業から全盛期まで
味園ユニバースビルの始まりは、華やかなダンスホールでした。中でも、複数の空中ステージを備えた日本最大級のキャバレー「ユニバース」は、その規模で一世を風靡しました。従業員募集チラシには「社交係 3000名大募集」という驚くべき数字が躍り、当時の活況を伝えています。その後、ディスコ、ホテル、サウナなど様々な施設が集まり、大阪有数の社交場として栄えました。5階には最大500人収容の大宴会場を備えたレストランもあり、多様なニーズに応える複合ビルとして長年親しまれました。
段階的な閉鎖へ
近年、ビルの営業形態は徐々に変化していきました。2020年には大宴会場が休業に入り、昨年末には2階の飲食店フロアが閉館。そして、最後まで営業を続けていた地下のライブハウス「味園ユニバース」が、この日、最後のライブを迎え、ビル全体の歴史に幕を下ろすこととなりました。
最終日、惜しまれつつ幕
閉館を前に、2日からファイナルイベント「AUGER ART ACTION『味園大宇宙展』 presented by COSMIC LAB」が開催されました。最終日に行われたFINALBY()によるライブでは、777枚のチケットが即日完売するなど、多くのファンが詰めかけました。キャバレー時代の豪華な装置などが残る独特なフロアは、最後の一日を惜しむ人々で溢れかえりました。
唯一無二の文化発信地
約25年にわたり味園を拠点に活動してきたクリエイティブプロダクション「COSMIC LAB」の高良和泉氏は、ビルを懐かしそうに振り返ります。「挑戦的なことをずっとやり続けてきて、いろんな側面のあるビル。独創的な建物、空間設計、事業展開にひかれ、その精神を受け継ぎながら活動してきました」と語りました。高良氏がビル内の小部屋から発見したという大量のチラシや資料からは、かつてキャバレーなどで特別ショウを行った松方弘樹、千葉真一、美輪明宏(丸山明宏)、梶芽衣子、横山やすし・西川きよしといった、そうそうたるスターたちの名前が見つかったといいます。
近年では、2階に集結した多種多様な個性的な飲食店が注目を集め、若い世代を中心にアングラ文化の発信地としても機能しました。2015年には、当時関ジャニ∞の渋谷すばる主演で、このビルを舞台にした映画「味園ユニバース」も製作され、そのユニークな存在が広く知られるようになりました。
歴史を終え、未来へ
大衆文化からサブカルチャーまで、大阪の多様な文化を生み出し、受け入れてきた味園ユニバースビル。高良氏は「この規模感でこんな面白い場所ってなかなかないと思うんですよね」と、その特異性を惜しみつつも、「新しい始まりになってくれたらいいですかね」と、この地から生まれる次なる文化への期待をにじませました。約70年にわたる歴史に幕を閉じた味園ユニバースビルですが、そのユニークな存在感と生み出した文化の記憶は、多くの人々の心に残り続けることでしょう。