鹿児島県のトカラ列島で発生した最大震度6弱の強い地震に関連し、これまでの地震では例を見ない複数の現象が観測されていることが指摘されています。地震現象はどこまで解明されているのか、そして何が依然として不明なのか、専門家の見解を交えて解説します。今回のトカラ列島地震は、震源域の拡大や地殻変動の大きさなど、これまでの群発地震とは異なる様相を見せています。
トカラ群発地震に見られる異例の現象
政府の地震調査委員会は臨時会合で、トカラ列島での一連の地震活動について報告を行いました。注目すべき点として挙げられたのは、震源が東西に拡大していることです。地震調査委員会委員長の平田直氏は、「最初のフェーズから第2フェーズに移ったところで非常に活発になった。どうして起きたかはまだよくわからない」と述べ、震源が東西に分かれる現象自体が珍しく、特に6月段階からその傾向が見られた後、7月に入り西側の活動が活発化し、3日には東側震源域で震度6弱が発生した経緯を説明しました。
さらに異例なのは、観測された地殻変動の大きさです。国土地理院が人工衛星データから解析した結果、地震が始まった6月21日以降、宝島の観測点は当初東北東へ1.8センチ移動していましたが、7月2日正午から3日午後にかけて南方向へ4.2センチも移動しました。平田委員長は、「変動量が極めて大きい。能登半島地震のときですら数年かけて数ミリ、数センチだった。(今回は)2日3日で4センチも動いたというのは非常に珍しい」と指摘しています。この4センチという大きな地殻変動がなぜ起きたのか、トカラ列島の地下で一体何が進行しているのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
群発地震のメカニズムと終息の形
元気象庁長官の西出則武氏は、断層のズレによって地震が発生していることは観測技術でわかっているものの、「なんでここで繰り返し群発地震が起きているかということ」が不明な点だと語りました。
西出氏によると、群発地震には様々な終息の形があります。例えば、能登半島のように群発地震の後に震度7クラスの本震が発生して終息するケースや、長野県松代町で1965年頃から6万回以上の群発地震が観測された後、最終的に地下水が出て収まったケースなどです。今回のトカラ列島での群発地震がどのような形で終息するのかについて、西出氏は「トカラはこれまで、群発地震がある程度の期間続いて収まることが多かったが、今回は圧倒的に地震の数が多く期間が長いので、これまでと違う終わり方をする場合もある」と述べ、これまでの事例とは異なる可能性を示唆しました。
「トカラの法則」と地震予知の限界
今回の地震活動を巡っては、「トカラの法則」という言葉も注目されています。これは、トカラ列島で地震が頻発すると、後に日本のどこかで大地震が起きるという説で、2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震などが例に挙げられ、SNS上などで不安視する声が見られます。
トカラ列島で群発地震発生後、「トカラの法則」を懸念する人々の様子
西出氏は、「日本は地震国。結び付けようと思えば、結びつく地震が見つかってしまう」と述べ、地震の多い日本においては、特定の場所での地震活動と別の場所での大地震を関連付けてしまう傾向があると指摘しました。また、「トカラ列島でどれくらいの地震が起こっていたかというのと、結びつけた地震(との関係性)をとってみると、トカラ列島で群発と言えないぐらい数十回とか非常に少ない回数の地震が起こったのと、能登半島地震とか他の地震と関連付けたような資料が出てきた。今回(トカラ列島地震では)1000何百回と起こっているが、それとほんの数十回しか起こらなかったものを同列に比べるのはそもそも変」とし、「トカラの法則」について、統計的な根拠に基づかない短絡的な関連付けである可能性が高いとの見解を示しました。元々日本が世界有数の地震国であることから、トカラ列島で地震があった際に、その後に日本全国で何かしらの大きな地震が起こる可能性は常に存在するため、それを特定の「法則」と見なすのは適切ではないとしています。
現在の科学で地震はどこまで解明され、何がまだわかっていないのでしょうか。西出氏は、東海地震や南海トラフのようなプレート境界の巨大地震予知について、気象庁が長年国を挙げて研究を進めてきたものの、「研究すればするほど、社会に役立つような予知はできないことがわかってきた」と語り、地震予知の現状と限界を改めて強調しました。
結論
トカラ列島で発生している群発地震は、震源域の東西拡大や異常な地殻変動など、これまでの活動とは異なる特徴を示しており、専門家による詳しい解析が続けられています。群発地震の終息メカニズムは多様であり、今回の活動がどのような推移をたどるかは予測が難しい状況です。「トカラの法則」のような特定の場所での地震と全国の大地震を結びつける説については、日本が地震国であるという特性や統計的な根拠の不足から、専門家は関連性を否定的な見方を示しています。地震予知は依然として困難であり、多くの謎が残されているのが現状です。
参考
出典:ABEMA TIMES / Yahoo!ニュース