今夏の参議院選挙に向け、与党・自民党内で焦りが広がっている。党が実施した最新の情勢調査によると、公明党と合わせて過半数維持に必要な目標議席数「50」の獲得すら厳しい状況が浮き彫りになったためだ。ある自民党幹部(A氏)は、「西風の勢いがすさまじい。日々、過半数が遠のいている」と厳しい表情で語る。
石破茂首相は、参院選の目標を「与党で過半数」と掲げている。改選議席数125に対し、非改選75議席を持つ与党が参議院(議席数248)の過半数(125議席)を維持するには、改選で50議席獲得すれば達成できる計算だ。これは改選前の66議席から16減でも可能な、比較的控えめな目標と言える。前出のA氏は、「125議席のうち過半数もいかない50議席が目標というのは、最初から自公政権が半分白旗を上げている状態ですよ。だが、今やそれすら危うくなってきた」と危機感を募らせる。
情勢調査が示す「西風」とは
A氏が言う「危うさ」の原因として挙げるのが、「西風の勢い」だ。自民党は過去の参院選において、西日本(近畿・中国・四国・九州)の1人区で圧倒的な強さを見せてきた。
西日本と東日本の1人区の傾向
過去の選挙結果を見ると、この傾向は明確だ。例えば、2022年参院選では、西日本の17の1人区のうち、野党系候補(無所属含む)が自民党候補に勝利したのは沖縄選挙区の1つのみで、自民党が16選挙区で勝利した。19年参院選でも野党系の勝利は4選挙区、16年参院選では3選挙区にとどまっている。
一方、東日本(関東から北)の15ある1人区では、野党系は一定の議席を獲得してきた。22年参院選でこそ野党系が獲得した選挙区は3つだったが、19年参院選は6つ、16年参院選では過半数の8選挙区で勝利するなど、東西で異なる様相を呈してきた。
A氏は、「関東から北は野党系が強い意識があり、自民党内でも『かなわない』という声もある。だが、西日本の1人区は、安倍晋三元首相、二階俊博元幹事長、麻生太郎最高顧問ら大物が地盤を持ち、長くにらみをきかせてきた」と語る。
重鎮たちの看板揺らぐ?「西風」の背景
しかし、今回の参院選の情勢調査では、これまで盤石と見られていた西日本の情勢が悪化しているという。この西からの野党の追い上げこそが「西風」であり、A氏はその背景をこう分析する。
「自民党の重鎮たちの看板が揺らぎつつあるのが、西風の理由。世代交代がうまく進んでいない証拠だ」
長年地域を支えてきた影響力が低下し、新たなリーダーへの移行がスムーズに進んでいないことが、西日本における自民党の苦戦に繋がっているとの見方を示唆した。
香川選挙区で国民民主党候補と玉木代表。西日本での野党の活動を示す。
まとめ
最新の情勢調査は、自民党が参院選で目標とする「与党過半数維持に必要な50議席」の確保に苦戦している現状を示唆している。特に、これまで強固な地盤とされてきた西日本の1人区での野党の追い上げが、この逆風の要因となっている模様だ。重鎮議員の影響力低下や世代交代の遅れが「西風」の勢いを強め、自民党は目標達成に向けた厳しい戦いを強いられている。