ナチスによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコースト。その「負の歴史」の爪痕は、今もドイツ各地に残されています。第二次世界大戦終結から80年を迎えようとする中、歴史を語り継ぐはずの史跡で、ある「異変」が起きていると報じられています。(2025年8月16日放送「サタデーステーション」より)
負の歴史への反省が根付くドイツの「ダークツーリズム」
サタデーステーションの若林奈織ディレクターが東京から16時間をかけて訪れたのは、ドイツの首都ベルリンです。「平和の象徴」とされるブランデンブルク門は、80年前には激しい市街戦の舞台となっていました。また、市内には「史上最悪の独裁者」アドルフ・ヒトラーが最期を迎えた地下壕の跡地も存在します。現在ではその面影はありませんが、掲示板が設置され、多くの観光客が足を止めています。
ヒトラー率いるナチス・ドイツによるポーランド侵攻が第二次世界大戦の引き金となり、組織的な大量虐殺、すなわちホロコーストが主導されました。アウシュビッツなどの強制収容所では、およそ600万人のユダヤ人が殺害されたとされています。ベルリンで取材に応じた24歳のドイツ人女性は「次世代をよりよくするためにも過去を振り返り、反省すべきです」と語り、21歳のドイツ人男性も「記憶し二度と繰り返さないことが重要です」と述べました。
ドイツ国民の心に深く根付いているのは、この「負の歴史」に対する強い反省の念です。その姿勢は街のいたるところに刻まれています。ベルリン中心部の広大な敷地には、まるで「棺」のような形状のモニュメントが広がり、ユダヤ人犠牲者を追悼する「ホロコースト記念碑」として知られています。地下には犠牲者の写真や手紙が展示され、当時の悲劇を静かに伝えています。こうした「負の歴史」の爪痕を巡る「ダークツーリズム」は、ドイツにおいて記憶を伝える重要な場として広く浸透しています。
ベルリンのホロコースト記念碑:過去の記憶を伝える現代的なモニュメント群
さらに、住宅街では街灯にパンのイラストが取り付けられた看板が目に留まります。その裏側には、1940年7月4日付で「ユダヤ人が食料品を購入していい時間は午後4時から午後5時の間のみ」というドイツ語の記述があります。このような看板がこの地区には80枚も設置されており、いずれも当時のユダヤ人差別に関する条例や法律が記されています。「負の歴史」を日常的に意識できるよう、あえて人目に付く場所に設置されているのです。
ユダヤ人迫害の歴史を伝えるボランティアのマクダレーナ・レッシュ氏は、「私たちドイツ人には特に厳しい過去、悲惨な過去があります。たとえ経験していなくても、責任があります」と、記憶を継承する意義を強調しています。
記憶を継承する責任:未来への教訓
ドイツが「負の歴史」と真摯に向き合い、その記憶を次世代へ語り継ぐ努力は、世界中の国々にとって重要な教訓となります。ホロコーストの史実から目を背けず、それを日常の中に溶け込ませて再発防止を誓う姿勢は、平和な未来を築く上での揺るぎない土台となっています。今後、史跡で起きているとされる「異変」がどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視が必要です。