自民党最大派閥だった旧安倍派が、影響力回復に向けて本格的な動きを見せ始めた。昨年の衆院選では、派閥の政治資金を巡る裏金事件を受け、党執行部から非公認などの厳しいペナルティーを科され、多くの落選者を出した。石破茂政権下で非主流派に転落した同派だが、石破首相が8月末までに退陣を表明する見通しとなる中、次期総裁選を「再起」の機会と捉えている。しかし、党内からは依然として厳しい視線が向けられており、かつてのような結束を取り戻せるかは不透明な状況だ。
幹部会合で政局議論:巻き返しへの第一歩か
7月23日昼、東京・赤坂の中華料理店に、かつて「安倍派5人衆」と呼ばれた主要幹部4名が集結した。萩生田光一元政調会長、松野博一前官房長官、西村康稔元経済産業相、そして世耕弘成前党参院幹事長は、麺料理などを囲みながら、今後の政局について意見を交わした。この会合は世耕氏が呼びかけたもので、参加者らは首相の退陣が避けられない情勢であり、近く党総裁選が実施されるとの認識で一致した。具体的な総裁候補の名前は挙がらなかったものの、約30分間の会合は、旧安倍派が次期総裁選を見据え、水面下で動き始めたことを示唆している。
旧安倍派の萩生田光一氏、松野博一氏、西村康稔氏、世耕弘成氏が会合で意見交換する様子。自民党総裁選に向けた動きか。
「徹底的に干された」不満と、続く逆風
旧安倍派内には、石破首相や現執行部から「徹底的に干された」と感じる不満が根強く残っている。旧幹部らは4月までに党員資格停止や党役職停止といった処分を終えたものの、政府や党の主要ポストからは遠ざけられたままだ。衆院選で一度離党し無所属で当選した世耕氏も、自民党会派には所属しているものの、党への復党は未だ認められていない。
今回の参院選でも、旧安倍派に逆風が吹き荒れ、現職を含む4名が落選するという苦しい結果となった。しかし、衆参両院を合わせれば依然として50人以上の議員数を誇り、これは現在唯一派閥として存続する麻生派に匹敵する規模である。ある程度のまとまりを見せれば、党内での影響力を発揮し得る潜在力は依然として持ち合わせている。
総裁選での「結束」の難しさ:高まる離散の可能性
一方で、次期総裁選において旧安倍派が特定の候補を支持し、一枚岩となる見通しは立っていない。すでに、高市早苗前経済安全保障担当相、小林鷹之元経済安全保障担当相、そして小泉進次郎農相をそれぞれ推す動きが表面化しており、派内の意見が分かれている状況だ。24日には西村氏が高市氏と会談するなど、個別の連携も模索されている。旧派閥関係者からは「中堅若手は自分たちが主導権を握りたいと考えており、派としてまとまるのは難しいだろう」との指摘が出ており、内部の足並みの乱れが懸念される。
さらに、今回の参院選での自民党への強い逆風は、裏金問題を起こした旧安倍派への厳しい視線を強めている。「裏金で問題を起こした安倍派が現政権を批判すべきでない」との声も党内改選議員から聞かれるなど、批判の矛先は依然として旧安倍派に向けられている。しかし、24日の会合出席者の一人は、依然として逆風が強いことを認めつつも、「いつまでも責任を負わせられるのはおかしい。次の総裁選では非主流派になることだけは避けなくてはならない」と、今後の総裁選での立場を巡る危機感を露わにした。旧安倍派は、再起への強い意欲を持つ一方で、内部の結束の難しさと、過去の不祥事に対する外部からの厳しい評価という、二重の課題に直面している。
参考文献
- 毎日新聞 (mainichi.jp)
- Yahoo!ニュース (news.yahoo.co.jp)