多くの政治家が出版する書籍は、「内容が薄い」「退屈だ」と評されることが少なくありません。果たしてその背景には何があるのでしょうか。元千葉県鎌ケ谷市長・清水聖士氏の新刊『市長たじたじ日記――落下傘候補から、5期19年、市長務めました』が、そんな政治家の本の「実態」と、19年の市長経験から得た真実を赤裸々に語ります。
「支援者に配っているんだよ」:政治家本の裏側
ある日、清水氏は知り合いの議員から、大手出版社から出たばかりの書籍を受け取りました。カバーには本人の格好良い写真が大きく使われていますが、中身は自身の業績の羅列と耳障りの良い理想論ばかりで、読むほどにつまらなさを感じ放り出してしまいました。
後日、その議員が「自費出版じゃないんだけど、5000部を買い上げて、支援者に配っているんだよ」と明かします。このエピソードは、なぜ多くの政治家の本が「退屈だ」「読み応えがない」と評されるのかを如実に物語っています。これらの書籍は、実質的には自己宣伝や自らの主張の一方的な垂れ流しに過ぎません。出版社側も、大量購入してくれる「お得意さん」である政治家の意向を汲みがちで、商業的な成功よりも政治活動の一環として機能する側面が強いのです。体裁は本でも、実質は選挙で配る高額なチラシと変わらない。しかし、5000部購入にかかる数百万円という資金力には清水氏も感心したといいます。
政治家が出版した書籍の山。中身が薄いと評される政治家の本の特徴を表す。
5期19年のベテラン市長が明かす「忖度なし」の真実
では、今回清水聖士氏が上梓した『市長たじたじ日記』は、一般的な政治家の本とどう異なるのでしょうか。清水氏は2002年、「落下傘候補」として千葉県鎌ケ谷市の市長選挙に立候補し、見事に当選。以来、5期19年という長きにわたり市長職を務め上げました。この間、千葉県市長会会長も歴任するなど、地方行政の最前線で豊富な経験を積んだベテランです。
しかし、ある出来事を機に市長を辞職。同年に行われた2021年の衆議院選挙に出馬するも落選し、政治家としてのキャリアに「ひと区切りをつけた」と語ります。このため、もう有権者にも政界にも遠慮も忖度も一切ないと断言。「怖いものは何もないのだ(ただし、妻と娘だけは少しだけ怖い)」と本音をユーモラスに覗かせます。
本書では、このような背景から、きれいごとや建前を並べるのではなく、市長経験で直面した困難や、職員とのやりとり、市民との交流の中で見えてきた真実が、包み隠さず綴られています。「ランチは572円のコンビニ弁当」や「職員の飲酒運転にドギマギしたことも…」といった、これまでの政治家の本ではあまり語られなかった“優雅とはほど遠い”市長の日常や裏側も明かされ、読者に新たな視点と洞察を提供するでしょう。
多くの政治家の本が自己宣伝に終始する中、清水聖士氏の『市長たじたじ日記』は、その特異な立場から「忖度なし」の真実を語る一冊として注目されます。長年の市長経験で培われた知見と、もう隠す必要のない本音が詰まった本書は、政治家の裏側や、日々の政治家の日常に興味を持つ読者にとって、貴重な洞察を与えてくれることでしょう。