参政党・神谷宗幣代表「高齢女性は…」発言も支持率上昇のなぜ? 選挙戦で注目の軌跡と「あの勢力」論

参院議員選挙の選挙戦が本格化する中で、新興政党である参政党が比例代表での支持を急拡大させ、野党の中でも上位に位置づけられるなど注目を集めている。しかし、党代表を務める神谷宗幣氏(47)の過去の言動や思想には、一部で物議を醸すものも少なくない点が指摘されている。

神谷代表の物議を醸す発言と支持拡大の現実

参院選が公示された2024年7月3日、神谷代表は東京・銀座で行われた第一声の場で、「子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよね。これを言うと差別だという人がいますけど、違います。現実です。男性や、申し訳ないけど高齢の女性は子どもが産めない」と発言した。この発言は、特定の層への配慮に欠けるとして複数のメディアで取り上げられ、各方面から批判の声が上がった。

にもかかわらず、参政党への支持は伸長を続けている。政治部デスクによると、参政党は、帰化や永住権の要件厳格化を含む「日本人ファースト」政策や減税を掲げ、保守層を中心に支持を広げている。また、学校給食における有機食材使用の義務化などを訴え、子育て世代へのアピールも成功しているという。

現在の参政党は、神谷代表が持つ参院の1議席のみだが、直近の情勢調査では全国比例で6議席、東京選挙区で1議席を獲得する勢いを見せている。さらに、大阪や神奈川などの複数区でも議席獲得を争う候補者を擁立している。先週末に共同通信が実施した調査では、比例投票先として参政党が8.1%の支持を集め、国民民主党(6.8%)や立憲民主党(6.6%)を上回る結果となった。このデータは、有権者の多くが神谷代表の個別の発言よりも、党が掲げる政策やメッセージに関心を寄せている可能性を示唆している。

参議院議員選挙期間中に演説する参政党の神谷宗幣代表参議院議員選挙期間中に演説する参政党の神谷宗幣代表

陰謀論的な言説と「あの勢力」論

その一方で、神谷代表の著作などには、陰謀論的な言説とも受け取れる主張が見られる過去も指摘されている。例えば、神谷代表の編著である『参政党Q&Aブック基礎編』には、以下のような記述がある。

〈Q27 参政党のメンバーが言う「あの勢力」とは何でしょうか? A ユダヤ系の国際金融資本を中心とする複数の組織の総称です。(中略)日本は「あの勢力」に数百年前から標的にされ続けてきました。私たちが歴史で学んだ出来事の多くの背後には「あの勢力」が存在していたのです〉

このような記述は、「あの勢力」といった特定の集団が歴史上の出来事を裏で操っているという考え方に基づいていると解釈できる。神谷代表は、既存の政治システムに変革をもたらす存在なのか、あるいは陰謀論的な思考の持ち主なのかという問いが投げかけられている。

「日本人ファースト」思想の原点となった海外経験

神谷代表の思想的な原点として、大学4年時に1年間休学して行ったカナダでの短期語学留学と、その後の世界各地でのバックパッカー体験が挙げられる。自身の著書『日本のスイッチを入れる』の中で、この経験について彼はこう綴っている。

〈カナダ、アメリカで今までの生き方に疑問を抱き、ヨーロッパでその疑問が正しかったことに気が付き、北アフリカで世界の現実を知りました。そして心から日本人に生まれてよかったと思えるようになり、両親を筆頭に自分がお世話になった方々への感謝、日本という国への感謝の思いが持てるようになりました〉

この記述からは、海外での経験を通じて、自身の価値観や日本の立ち位置について深く考察し、日本人としてのアイデンティティや日本への感謝の念を強めていった過程がうかがえる。これは、現在の参政党が主要なスローガンとして掲げる「日本人ファースト」の思想に繋がる萌芽が、この時期すでに存在していたことを示唆している。帰国後、彼は周囲の友人に「生き方や考え方を変えないと」と熱心に語りかけて回ったという。

まとめ

参政党は、神谷宗幣代表の時に物議を醸す発言や、陰謀論的とも取れる過去の言説が指摘される中でも、来る参院選に向けて着実に、そして急激に支持を拡大している。共同通信の世論調査で主要野党を上回る支持率を示すなど、その勢いは無視できないものとなっている。党が掲げる「日本人ファースト」や子育て世代へのアピールなどが、従来の政党に飽足らない有権者の心をつかんでいる可能性がある。代表個人の思想的背景、特に海外経験がもたらした「日本人ファースト」の原点や、「あの勢力」に関する記述は、今後の党の方向性や支持層の動向を理解する上で重要な要素となるだろう。参院選における参政党の実際の議席獲得数は、現在の日本の政治情勢において新たな波を示す可能性を秘めている。

参考文献:

  • 共同通信による世論調査結果 (言及された調査)
  • 神谷宗幣 編著『参政党Q&Aブック基礎編』
  • 神谷宗幣 著『日本のスイッチを入れる』