「天下一品」大量閉店に見るラーメンチェーンの二極化:都市型苦戦、郊外型好調

「天下一品」の大量閉店のニュースが世間を騒がせました。特に東京を中心とするいくつかの店舗が6月30日に同時にシャッターを下ろしたのです。この背景には、それらの店舗を運営していたフランチャイジーの個別の事情があると予測されています。しかし、この出来事は、現在の日本のラーメンチェーン業界全体の構造的な変化を象徴しているとも言えます。実際、昨今では都市型のラーメンチェーンが苦境に立たされる一方、郊外型のチェーンが顕著な勢いを増しています。

「天下一品」の相次ぐ閉店:都市型チェーンの苦境

今回閉店した「天下一品」の店舗は10店舗に上り、その多くが東京を含む首都圏に集中していました。特筆すべきは、これが昨年に続いて2年連続での都市部における大量閉店であるという点です。そもそも「天下一品」は、その店舗立地を見ても、都心部や繁華街に多く出店している傾向があり、一般的な分類では「都市型ラーメンチェーン」と位置づけられます。このような都市部での閉店が続いている状況は、高い家賃負担や人件費高騰、さらに近年ではリモートワークの普及による平日ランチ需要の変化など、都市型店舗が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。

都市型ラーメンチェーンとして苦戦が指摘される天下一品の店舗風景都市型ラーメンチェーンとして苦戦が指摘される天下一品の店舗風景

対照的な郊外型ラーメンチェーンの勢い

一方で、現在のラーメンチェーン業界で目覚ましい成長を見せているのが「郊外型」のチェーンです。日本ソフト販売株式会社が発表しているラーメンチェーンの店舗数ランキングを見ると、「天下一品」は9位(昨年は8位)ですが、その順位を追い抜いて上位に進出したのが「丸源ラーメン」です。丸源ラーメンは主にロードサイドを中心とした店舗展開で知られ、広い駐車場を備えているのが特徴です。2025年4月の段階で225店舗を擁しており、運営会社である物語コーポレーションの業績も極めて好調で、2025年6月期第3四半期決算では、売上高が前年同期比で14.8%増加するなど、その勢いを裏付けています。

さらに、「天下一品」の現在の店舗数(約200店舗)に肉薄し、猛烈な勢いで追い上げているのが「山岡家」です。山岡家も典型的な郊外型のロードサイド店舗チェーンであり、現在189店舗を展開しています。運営会社の丸千代山岡家はここ5年で経常利益が約12倍、純利益に至っては約20倍という驚異的な成長を遂げています(2021年1月期と2025年1月期を比較)。現在となっては珍しい24時間営業を多くの店舗で行っていることも、深夜の顧客層を取り込み好調を維持している要因の一つとされ、時間帯によっては驚くほどの行列ができている店舗も見られます。その経営効率と集客力から見れば、現在の勢いは丸源ラーメン以上とも評価できるでしょう。

まとめ:ラーメン業界の新たな潮流

近年の日本の外食産業、とりわけラーメンチェーン業界では、その主要な出店立地によって明暗がくっきりと分かれています。「天下一品」が都市部で相次ぐ閉店に見舞われている状況は、都市型店舗が抱える構造的なコスト増や需要変動への対応の難しさを浮き彫りにしています。対照的に、「丸源ラーメン」や「山岡家」に代表される郊外型ロードサイドチェーンは、車でのアクセス利便性や比較的広い店舗空間といった優位性を活かし、ファミリー層や深夜の需要などを着実に捉え、店舗網と業績の両面で拡大を続けています。この「都市型 vs 郊外型」という二極化のトレンドは今後も継続すると予想され、各ラーメンチェーンがどのような戦略をもって変化に対応していくかが、今後の業界勢力図を左右する重要な要素となるでしょう。

[Source] https://news.yahoo.co.jp/articles/f4924af99ef2fdda6c92f5093b20128731fe4450