光復80年・国交正常化60年、歴史問題に挑む日本の市民団体

韓国の光復80年と日韓国交正常化60年という節目を控える中、両国政府間の歴史認識を巡る応酬が繰り返される一方で、日本の市民団体は地道な交流を続け、両国の架け橋としての役割を果たしてきました。特に、日本政府に加害の歴史に対する真摯な反省を求め、被害者の人権回復に寄り添う「日本の良心」たちは、「歴史問題を人権と人間の尊厳という普遍的な視点から捉えるべきだ」と訴えています。

市民団体が求める「正確な真相究明」と人権の視点

「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」の矢野秀喜事務局長は、現状において正確な真相究明が最優先されるべきだと強調します。矢野氏はハンギョレ新聞の取材に対し、「当事者たちが持つ資料、記憶、証言などを照合・検証し、互いに認め合い納得できる真実に到達することが極めて重要だ」と述べました。さらに、「被害者が一人でも多くご存命のうちに、真実に基づいた謝罪と賠償が行われるべきだ」と強く訴えました。矢野氏は過去30年以上にわたり、強制動員の真相究明活動や被害訴訟支援など、日帝強占期(日本による植民地時代)の被害者支援に献身的に取り組んできました。彼は、「歴史問題は政治や外交の枠組みでなく、被害者の人権と尊厳の回復という視点で捉え直す必要がある」と主張し、この問題の根本的解決のためには、過去に日韓政府が締結した基本条約や請求権協定を超える新たな解決策が求められるとの見解を示しました。

沖縄の旧駐車場跡地に立つ、日帝強占期に死亡した朝鮮人軍属の名前が書かれた立て札沖縄の旧駐車場跡地に立つ、日帝強占期に死亡した朝鮮人軍属の名前が書かれた立て札

歴史研究家が語る「日本の宿題」としての歴史問題

歴史研究家の竹内康人さんは、歴史問題を「日本が解決すべき避けて通れない宿題」だと指摘します。竹内さんは、「歴史問題への対応は、日本政府の人権、平和、そして歴史認識の成熟度を測る試金石となるだろう」と語り、強制動員という痛ましい歴史から教訓を得る意識が希薄になっている現状を大きな問題だと批判しました。竹内さんは元歴史教師として、強制動員関連資料の発掘や、日本政府による歴史認識の歪曲に抗い真実を伝える活動を続けてきました。彼は、「強制動員の真相究明は、単なる過去の検証ではなく、日本が植民地主義を真に克服するためのプロセスであり、日本政府の人権と平和に対する姿勢そのものが問われている」と述べました。さらに、「日本政府は強制動員被害者名簿、被害の実態を示す資料、遺品、写真など、まだ多くの資料を公開していないが、これらを透明性をもって公開することが不可欠だ」と強調しました。加えて、日韓の研究者や市民の間での交流と連携をさらに緊密に維持する必要性を訴えました。

歴史研究家 竹内康人氏歴史研究家 竹内康人氏

長生炭鉱事故から見る誠意ある対応と遺骨収集の動き

「長生炭鉱の水非常(水没事故)を歴史に刻む会」の井上洋子共同代表は、「日本政府が歴史問題に対し誠意をもって向き合う姿勢こそが、日韓両国の友好と信頼関係をより一層深める」と語ります。井上さんは、日帝強占期に朝鮮人労働者136名を含む多数の人々が犠牲となった山口県長生海底炭鉱水没事故に関し、1990年代初頭から真相究明作業に取り組んできました。80年以上の長きにわたり闇に包まれていた事故現場を昨年ようやく特定し、現在も犠牲者の遺骨発掘作業を継続しています。最近、日本の石破茂首相がこの長生炭鉱での遺骨発掘作業に対する政府支援の検討を指示するという、「異例とも言える決定」を下しました。井上さんは、日本政府による朝鮮人犠牲者の遺骨収集と故郷への返還支援が、今後の日韓関係進展の重要な契機となり得ると期待を示しました。また、「『せめて遺骨だけでも収集し、故郷へ帰してあげたい』という思いは、誰しもが反対できない人道的な責任の履行に他ならない」と述べました。そして、「韓国政府には、日本政府に対し『韓国人犠牲者の遺骨収集への協力を』と要請することで、石破首相の勇気ある決断を後押ししてほしい。この過程を通じて、日本政府も歴史的責任を果たすための具体的な努力を示すことができるだろう」と語りました。

「長生炭鉱の水非常(水没事故)を歴史に刻む会」井上洋子共同代表「長生炭鉱の水非常(水没事故)を歴史に刻む会」井上洋子共同代表

結論として、日韓の歴史問題は、政治や外交の枠組みを超え、被害者の人権と尊厳の回復という人道的な視点からアプローチされるべき課題です。日本の市民団体や研究者たちは、長年にわたり地道な真相究明と被害者支援を続け、資料の公開や遺骨収集といった具体的な行動を通じて、日本政府に歴史的責任を果たすよう訴えかけています。これらの市民レベルでの粘り強い取り組みこそが、光復80年、日韓国交正常化60年を迎える両国関係において、真の和解と未来志向の関係構築に向けた確かな基盤を築く鍵となるでしょう。

参考文献

ハンギョレ新聞 日本特派員 ホン・ソクジェ (2025年7月9日). 光復80年、韓日国交正常化60年 日本の市民団体、真相究明を要求. Yahoo!ニュースより取得. (オリジナル記事のURL: https://news.yahoo.co.jp/articles/f92882371422f3aeb6084f5092410cef5e2e332f)