自民党の鶴保庸介参院予算委員長による「運のいいことに能登で地震があった」との発言が、記者会見での謝罪後も強い批判を浴び、炎上を続けている。この発言は、能登半島の被災地への配慮に欠けるとして、政治家としての姿勢が問われている。
複数の報道によると、鶴保氏は2025年7月8日、自身の地元である和歌山市で行われた参院選(20日投開票)の応援演説の中で、能登半島地震に言及した。その際、二つの地域に住む「二地域居住」の推進を訴える文脈で、「運のいいことに能登で地震があった」と述べたという。被災地の困難とはかけ離れたこの表現が、聴衆や報道を通じて瞬く間に広まった。
翌9日、鶴保氏は記者会見を開き、問題の発言について説明を行った。「能登地方が被災したことを『運よく』などと発言してしまいましたが、思った発言では全くありません」と釈明し、「被災地への配慮が足りなかったと反省しております」と述べ、陳謝の上で発言を撤回する意向を示した。しかし、この謝罪会見時の鶴保氏の態度が、新たな批判の火種となった。
鶴保庸介参院予算委員長。能登地震を巡る不適切発言が問題となっている。
SNS上では、謝罪会見の様子を見た人々から怒りの声が相次いでいる。鶴保氏が座ったまま頭を下げなかったことや、不貞腐れているように見えた態度に対し、「頭も下げていないし座ったまま… それで陳謝と言われてもなぁ…」「座ったままの謝罪なんて、謝罪ではないよな。しかも、嫌々してるのか不貞腐れた態度、マジ感じ悪い」といった批判が続出している。謝罪の言葉とは裏腹に、その態度が誠意を欠いていると受け止められたようだ。
鶴保氏をかつて知る人物からも、厳しい声が上がっている。立憲民主党の小沢一郎衆院議員は9日、鶴保氏の発言について「政治家以前に人として絶対に許されない発言。人間性が問われる」と痛烈に非難した。小沢氏は、能登半島地震で多くの尊い命が失われ、多くの方が家を失い、未だ避難生活を余儀なくされている現状を指摘。「撤回では到底、済まないだろう」として、鶴保氏に対して毅然とした対応を求めた。
さらに小沢氏は、鶴保氏が過去に内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)を務めていた際、沖縄県の米軍施設工事への反対派に対する機動隊員の「土人」発言を差別にはあたらないとする見解を示したことに言及。「沖縄担当大臣当時も『土人発言』容認発言に加え、『沖縄振興策は選挙結果次第』などと暴言を繰り返してきた人物」であると指摘し、こうした人物が参院予算委員長という要職にあることに対し「呆れ返る。正に自民党の象徴」と批判した。10日には、鶴保氏の会見でのふるまいについて「自らの責任が厳しく問われているこの状況下、なぜ小馬鹿にしたように笑えるのか、全く理解できない。結局、反省などしていないということ。全てが絶望的」と切り捨てた。小沢氏は「自民党は自民党。いつも同じことの繰り返し。そして、それを止めるのが選挙である」と結び、自民党全体への批判に繋げている。なお、鶴保氏は国会議員になる前、小沢氏の秘書を務めていた経緯があるが、小沢氏自身はこの関係性には言及しなかった。
鶴保氏の発言とそれに対する反応は、政治家の言葉遣いと被災地への配慮、さらには謝罪のあり方について、改めて社会に問いを投げかけるものとなっている。特に、災害発生から半年以上が経過してもなお復旧・復興が進まない被災地の人々の心情を逆撫でする形となった今回の発言は、参院予算委員長という重責にある政治家としてあるまじき失言として、今後も厳しい目が向けられるだろう。