NHK総合で毎週日曜夜8時に放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。7月6日に放送された第26回「三人の女」は、主人公・蔦重とその妻ていの関係に焦点が当たり、大きな反響を呼びました。本記事では、この回で描かれた感動的な場面を中心に、あらすじと見どころをご紹介します。
冷夏と米価高騰、そして耕書堂の苦悩
第26回では、冷夏による米の不作が深刻化し、米の値が昨年の倍にまで高騰するという社会情勢が描かれました。戯作者たちが集まる蔦重の店「耕書堂」でも、奉公人が増えたことで米の減りが早く、蔦重は苦労を強いられていました。さらに、蔦重の実母つよが高岡早紀さん演じる姿で店に転がり込み、髪結いの仕事で店に居座ろうとするなど、内情も騒がしくなります。一方、江戸城では、渡辺謙さん演じる意次が高騰する米の値に対策を講じるものの効果が見られず、幕府の対応に業を煮やした高橋英樹さん演じる紀州徳川家の徳川治貞が幕府に忠告する事態へと発展していました。こうした世の乱れが、登場人物たちの心情にも影を落とします。
ていの決意と出奔の理由
「江戸一の利き者」と呼ばれる蔦重の妻として、自身の役割に悩んでいたていは、耕書堂を出てしまいます。以前出家を考えていたことを知っていた蔦重は、ていが寺の門をくぐる前に追いつき、呼び止めます。呼び止められたていは、家を出た理由を改めて蔦重に語り始めました。「江戸一の利き者の妻は、私では務まらぬと存じます。私は石頭のつまらぬ女です。母上様のような客あしらいもできず、歌さんや集まる方たちのような才があるわけでもなく。できるのは帳簿を付けることくらい」。自分には華やかさや才能がないと感じ、「今を時めく作者や絵師や狂歌師、更にはご立派なお武家様まで集まる蔦屋の女将には、もっと華やかで才長けた…たとえば吉原一の花魁を張れるような、そういうお方がふさわしい」と蔦重に伝え、深く頭を下げて許しを請いました。
大河ドラマ『べらぼう』主演の横浜流星さん演じる蔦重
蔦重の追いかけと真心の説得
ていの言葉に対し、蔦重は「そりゃ、随分な言いぐさですね。あんたは江戸一の利き者だ。けどてめえの女房の目利きだけはしくじった。おていさんはそう言ってんですね?」と反論します。そして、ていへの真心を語り始めました。「俺ゃ、おていさんのこと、つまんねえなんて思ったことねえですぜ。説教めいた話はおもしれえし…この人、まともな顔してめちゃくちゃおもしれえって思いましたぜ。縁の下の力持ちなとこも好きでさね」。皆が見ていないところでしっかりと働く姿や、背筋がピンとしているところなど、ていの良さを具体的に褒め続けます。
「俺のたった一人の女房」交わされる手
蔦重は、ていへの思いをさらに深く伝えます。「『出会っちまった』って思ったんでさ。俺と同じ考えで、同じつらさを味わってきた人がいたって。この人なら、この先山があって谷があっても一緒に歩いてくれんじゃねえかって…。いや、一緒に歩きてえって」。ていの前に歩み寄り、「おていさんは、俺が、俺のためだけに目利きした、俺のたった一人の女房でさ」と真っ直ぐな言葉で伝えました。蔦重が差し出した手に、ていも自らの手をゆっくりと重ねるシーンは、二人の深い絆と信頼を象徴しており、多くの視聴者の感動を呼びました。
今回の第26回「三人の女」は、米価高騰という社会的な混乱を描きつつも、蔦重とていという夫婦の個人的な危機とその乗り越え方に焦点を当てた回でした。自己評価の低さに苦しむていと、彼女の真価を誰よりも理解し、共に生きることを願う蔦重の姿が丁寧に描かれ、二人の関係性がより強固になったことを示す感動的なエピソードとなりました。
大河ドラマ『べらぼう』第26回:ていと蔦重が手を重ねる感動的な場面