7月1日、JR静岡駅周辺は、警視庁を含む全国からの多数の警察官が集結し、厳戒態勢が敷かれていた。これは、この日から3日間にわたり、全国各地の著名な暴力団組織が六代目山口組へ挨拶に訪れるためであり、事実上の司忍組長への「暑中見舞い」とされる。一方で、神戸山口組などが沈静を保っている状況を受け、警察当局は依然として厳重な警戒を継続していた。六代目山口組と神戸山口組を中心とした分裂抗争は、六代目側による一方的な「終結宣言」から約3ヶ月が経過しているものの、6月19日には大阪府警や兵庫県警を含む9府県警が、両組織に対する特定抗争指定の3ヶ月間延長を決定しており、警察の視点では「両組織間の緊張は続いている」との見方が変わっていないことを示している。
この日、最初に六代目山口組への挨拶に訪れたのは、東京都に拠点を置く稲川会だった。内堀和也会長、貞方留義理事長をはじめとする最高幹部陣が静岡駅に到着した。六代目山口組側は、5月に若頭補佐に昇格した落合金町連合の佐藤光男会長らが出迎えた模様だ。本件に詳しい実話誌記者は、「5月に執り行われた稲川会の清田次郎総裁の葬儀に際しても、六代目山口組は最も早く弔問に訪れていました。六代目山口組の竹内照明若頭と稲川会の内堀会長は兄弟盃を交わしており、両組織の関係は非常に強固です。現在、六代目山口組では竹内若頭が組織の大幅な改編に着手していますが、今後はさらに稲川会との連携を深めていくと見られています」と解説する。内堀会長らは、六代目側が用意した車両に乗り込み、司組長と竹内若頭が待機する県内の二次団体本部へと移動した。本来であれば、六代目山口組の総本部がある神戸市内で面会を行いたいところだろうが、前述の実話誌記者は、「特定抗争指定が解除されない限り、事務所の使用制限も解除されません。六代目側としては、次回の特定抗争指定再延長を回避したいという思惑があるはずです」と指摘する。
六代目山口組の司忍組長。各地からの幹部らが挨拶に訪れた際の状況に関連する写真。
その後も、静岡駅には全国各地の著名な暴力団組織が続々と到着した。現地警察関係者の確認によると、松葉会(東京)、双愛会(千葉)、東声会(東京)などが来訪したという。別の警察関係者は、「いずれの組織も施設に滞在したのは20分程度で、挨拶や近況報告に留まる程度の短い会話だったと推測されます。一般の方々からすれば、『なぜわざわざ集まる必要があるのか』と疑問に思うかもしれませんが、こうした集まりをヤクザ社会は極めて重要視します。『前回は来た幹部が今回来ていない』といった些細なことでさえ、組織間の関係に亀裂が生じる原因となることも少なくありません。今回の集まりでは、警察関係者の間では、六代目山口組が司組長と竹内若頭の新体制に移行したことで、各組織からの来訪者に何らかの変化が見られるかどうかに注目が集まっていました」と語る。
翌日には、司組長は愛知県内の二次団体本部に移動し、共政会(広島)、親和会(香川)、合田一家(山口)、福博会(福岡)、会津小鉄会(京都)といった西日本を拠点とする暴力団のトップらと面会した。3日目には、住吉会(東京)の小川修司会長が来訪したことが確認されている。今回の「暑中見舞い」について、前述の実話誌記者は次のように総括している。「今回訪問した10組織のうち、住吉会を除く9組織は、六代目山口組にとって親戚あるいは友好団体にあたります。住吉会は親戚団体ではありませんが、西口茂男前総裁と司組長との間に長年の縁があり、両組織間では長きにわたり友好な交流が続いています。今年、創立110周年を迎えた山口組ですが、竹内若頭は組織の高齢化に対応するため、大幅な若返りを図ろうとしており、一部では『山口組200年計画』とも称されています。構成員数の減少や警察当局による厳しい取り締まりが続く厳しい状況下で、組織を刷新し、他の組織との平和共存路線を模索していく姿勢が今回の会合からも見受けられました」。しかし、そうした状況下で、この「暑中見舞い」からわずか数日後の7月9日に、六代目山口組を震撼させるような緊急事態が発生していたことが判明している。その詳細については、次回の報道で詳らかにする予定だ。