トランプ前米大統領は12日、欧州連合(EU)およびメキシコに対し、8月1日以降、輸入品に関税30%を課すと表明した。これは、4月に表明していたEUへの「相互関税」20%から大幅な引き上げとなる。メキシコに対しては、合成麻薬フェンタニルの米国への流入防止対策の不備などを理由に、既に課している25%の制裁関税とは別に、新たに30%の関税を上乗せするとした。この強硬な姿勢は、主要貿易相手国との間でトランプ関税を巡る貿易摩擦を再び激化させる可能性を示唆している。
米国ホワイトハウスでの記者会見で関税政策について語るトランプ大統領
一方的な通知と適用範囲
トランプ氏は自身のソーシャルメディアを通じ、EUとメキシコ宛ての書簡を公開する形で今回の決定を明らかにした。今回の関税措置は、鉄鋼・アルミニウムや自動車といった国家安全保障上のリスクを理由とした「分野別関税」の対象外となる幅広い輸入品に適用される見通しだ。この動きは、特定の産業保護だけでなく、より広範な貿易関係に影響を与える可能性を示している。
関税撤廃の条件と報復への警告
トランプ氏は書簡の中で、関税撤廃や税率調整の条件を提示している。EUに対しては「市場を開放し、関税や非関税障壁を取り除く」ことを求めた。これは、米国製品へのアクセス改善を求める姿勢の表れだ。メキシコに対しては、市場開放に加え、米国へのフェンタニル流入対策を強化するよう強く要求した。
さらに、EU、メキシコ双方に対し、もし報復措置をとるならば、それに応じて関税率をさらに引き上げると明確に警告し、一方的な圧力を強める姿勢を示している。これは、相手国からの抵抗を抑え込みたい意図があると考えられる。
EUの反応と合意期限の延長
これに対し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は12日、声明を発表した。8月1日までの合意を目指して貿易交渉を続ける考えを示す一方で、「(域内の)利益を守るためには、必要ならば相応の対抗措置を含めてあらゆる手段を取る」と述べ、報復関税の発動を示唆してトランプ政権の動きを牽制した。EUとしては、対話の扉は開けているものの、一方的な措置には断固として対抗する構えだ。
トランプ氏は、当初7月9日としていた相互関税の上乗せ分の停止期限を8月1日に延長する大統領令に既に署名している。この期限までに関税協議がまとまらなかった場合に適用する新たな関税率を、各国・地域に対して書簡で一方的に通知する手法をとっており、従来の多国間協議ではなく、二国間での強硬な交渉を重視する姿勢がうかがえる。
日本を含む他国への影響
書簡は7日から公開が始まり、EUとメキシコを含め、これまでに25カ国・地域が通知を受け取ったことが明らかになっている。日本向けには、8月1日から25%の関税を課すとしている。これは、日本の主要な対米輸出品に影響を及ぼす可能性がある。米国の主要な貿易相手国であるインドと台湾については、現時点で関税率が明らかになっていない。トランプ氏は書簡を送らなかった国々に対しては、15%または20%の関税を適用する考えを示しており、広範な国々への影響が懸念されるとともに、国際的な貿易秩序への影響も注視される。
まとめ:高まる貿易摩擦リスクと今後の焦点
今回のトランプ氏による関税大幅引き上げ表明は、EUやメキシコ、そして日本といった主要貿易相手国との間で、再び貿易摩擦が激化するリスクを高めるものと言える。一方的な関税措置に対し、各国がどのような対応を見せるか、そして8月1日の期限に向けて交渉が進展するのかが今後の焦点となる。世界経済の先行きにも影響を与える可能性のあるトランプ関税の動向は、引き続き国際社会の注目を集めるだろう。
参照元
https://news.yahoo.co.jp/articles/088dc3a4d3ed984456828997b4a45d7a30b57500