「愛車のエンジンを大切にするなら低回転で優しく走るべき」という考え方は多くのドライバーに浸透していますが、果たしてそれは真実なのでしょうか?あるいは「たまには高回転までエンジンを回した方が良い」という意見もあります。最新のエコカーからスポーツモデルまで、多様なエンジンの実態を踏まえ、10万km、20万kmと長く愛車との付き合いを続けるために本当に必要な知識を解説します。エンジンの寿命を左右する運転方法とメンテナンスの秘訣を探ります。
「低回転走行」がエンジンに与える影響と「高回転の必要性」
クルマのエンジンを長持ちさせたいと考える時、「低回転で優しく運転する」という選択をするドライバーは少なくありません。確かに、過度な負荷や高回転域での連続走行はエンジンの摩耗を早めるリスクを伴います。しかし、その一方で、街乗り中心でエンジンの回転数を2000rpm以下に抑え続ける運転ばかりでは、エンジン内部、特に燃焼室や吸排気系にススやカーボンが堆積しやすくなります。このカーボン堆積はエンジンの燃焼効率を低下させ、結果として不調を招く原因となり得るのです。
実際のところ、「毎回高回転まで回す必要はない」ものの、「全く回さないのもエンジンの健康には良くない」というのが、長寿命化のための運転方法における本質的な答えです。適度にエンジンを高回転まで回すことで、燃焼室に堆積したカーボンを燃焼・除去し、エンジンの調子を維持する効果が期待できます。これは、エンジンの本来の性能を最大限に引き出し、同時に耐久性を高めるための重要な要素と言えるでしょう。
最新のエコカーエンジン内部。適切な運転とメンテナンスで性能を維持。
最新エコカーエンジンの驚くべき進化:スポーツエンジンに匹敵する性能
一昔前のイメージでは、エコカーのエンジンは非力で、スポーツ走行には向かないと考えられがちでした。しかし、現代のエコカーに搭載されるエンジンは、驚くべき進化を遂げています。例えば、トヨタの「ダイナミックフォースエンジンA25FKS型」(RAV4などに搭載)は、その高性能ぶりで注目されています。
エンジンの性能を測る指標の一つに「平均ピストンスピード(ピストンの上下運動の平均速度)」があります。かつてのスポーツエンジン、例えばホンダのタイプR系NAエンジンのように8400rpm以上回るエンジンは別格ですが、高性能車でも7500rpmあたりがレブリミットの場合、平均ピストンスピードは通常20m/s程度に収まるように設計されます。ところが、トヨタのA25FKS型エンジンは、6600rpmで22.7m/sに達します。これは、かつて最高レベルのピストンスピードと言われたホンダS2000前期型のF20C(23.2m/s)に匹敵する数値です。
この高いピストンスピードを実現するために、A25FKS型エンジンはロングストローク化が図られ、ピストンの軽量化やフリクション(摩擦)対策がまるでレーシングエンジンのように徹底されています。このように、最新のエコカーエンジンは高回転性能をも兼ね備えており、そのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、耐久性を維持するためには、カーボン除去を目的とした適度な高回転の使用と、定期的な適切なオイル管理が不可欠なのです。
まとめ
エンジンの長寿命化には、ただ低回転で優しく運転するだけではなく、適切なタイミングでの高回転使用が重要であることがお分かりいただけたでしょうか。カーボン堆積を防ぎ、エンジンの健康を保つためには、街乗り中心の運転だけでなく、時には安全な場所でエンジンを高回転まで回してやる「慣らし運転」ならぬ「カーボン飛ばし運転」も効果的です。さらに、高性能な最新エコカーエンジンであっても、その複雑な構造と高効率性を維持するためには、メーカー指定のオイル交換サイクルを守り、質の良いエンジンオイルを使用する「オイル管理」が欠かせません。これらのバランスの取れた運転とメンテナンスこそが、愛車と長く付き合うための秘訣と言えるでしょう。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/22e2978003b8746d17b3ed299341a64509408025