与野党は、年内にガソリンの暫定税率廃止で合意しており、この廃止は秋の臨時国会で正式に決定される公算が高まっています。エネルギー庁のデータによれば、レギュラーガソリンの全国平均価格は現在1リットル174円程度ですが、約10円の補助金効果を除くと実質は184円程度です。もし25.1円の暫定税率と約10円の補助金が廃止されれば、ガソリン価格は1リットル159円程度まで下がり、約13.6%の価格低下が見込まれます。これは、一般世帯のガソリン購入費用を年間で約9,670円軽減する計算となります。暫定税率廃止に向けた具体的な枠組みについては、現在も与野党間で調整が続けられています。しかし、このガソリン税率廃止だけでは、現状の物価高に対する対策としては十分ではないとの見方が強く、野党各党は参院選の公約で、ガソリン暫定税率の廃止に加え、消費税減税などの実施を訴えていました。
日本の物価高対策と政治的合意形成のイメージ図
与党の給付金実現に向けた野党との連携課題
秋の臨時国会において、与党はガソリン暫定税率の廃止に加えて、参院選で公約として掲げていた国民一律2万円を中心とする給付金の実現を目指す方針です。しかし、現状の与党は衆参両院で過半数の議席を失っており、この給付金政策を実現するためには野党からの協力を得ることが不可欠となっています。特に、日本維新の会は、秋の臨時国会で一律2万円の給付金が補正予算案に盛り込まれた場合、これに反対する姿勢を明確にしています。
このような状況下で、与党が協力を得られる可能性が最も高いのは立憲民主党だと考えられます。立憲民主党もまた、参院選挙の公約において、国民一律2万円の給付金を掲げていたため、政策的な共通点が存在します。ただし、立憲民主党の提案は、消費税減税とセットで給付金を実施するものであり、原則1年間食料品の税率を0%にする減税が実施されるまでの「つなぎ」としての位置づけである点が、与党案とは異なります。
国民一律給付金の問題点と代替案の議論
与党内では、国民一律給付金を公約に掲げて臨んだ参院選で与党が大敗したことを受け、この給付金政策の枠組みを見直す議論が浮上しています。例えば、給付対象を低所得層に絞り込み、一人当たりの給付額を増額するといった案も検討されています。政府・自民党が当初掲げた給付金は、国民一律2万円の給付に加え、子ども・住民税非課税世帯へはさらに2万円を加算するという内容でした。この国民一律2万円の給付金だけで約2兆4,668.0億円、それに子ども・住民税非課税世帯への加算分を加えると総額約3兆3,248.6億円に上ると試算されています。この給付金が実質および名目GDPを押し上げる効果は、1年間でそれぞれ+0.14%、名目GDP押し上げ額は8,594億円と見込まれています。
しかし、物価高騰が続く中でも生活に余裕のある世帯や個人に対しても一律に給付を行うことは、必ずしも適切ではないとの批判もあります。現在、真に必要とされているのは、物価高によって生活が著しく圧迫されている低所得層を重点的に支援する物価高対策です。そのためには、そうした困窮している人々に絞って給付を実施することがより効果的であり、政府による所得再分配という付加価値を最大化できます。一方、全ての国民に給付を行うという形では、国民から幅広く集めた税金を政府が再び国民に広く配るだけとなり、政策的な付加価値が低いと見なされ、「バラマキ的」政策と批判されてもやむを得ないとの声も出ています。
与党が目指す給付金政策の実現には、野党、特に立憲民主党との協力が不可欠であり、その交渉過程で給付の対象や形式について再検討が求められています。物価高対策としての実効性と、所得再分配における公平性の両面を考慮した、より戦略的な政策決定が今後の焦点となるでしょう。